「非上場化に伴うシナジー効果が本当に出てくるのは来期(22年3月期)以降」(伊藤忠幹部)
ファミマを戦力化できればかなりの利益の上積みを期待できるが、経営の自由度が下がり、現場の士気が低下するなら、絵に描いた餅に終わる懸念がないわけではない。
岡藤会長兼CEOは三菱商事を抜き、悲願としてきた業界トップに立つ勢いだ。「経営者は油が乗り切っている時に(自分の油で)滑る。これを油断という」。ホンダの創業者、本田宗一郎の言葉を、岡藤氏は自らの戒めとしている。「時価総額や株価一番などと言われて浮足立っていると、世間から反感を買い、せっかく築いた伊藤忠のイメージが一瞬にして壊れてしまう。これが一番怖い」。岡藤氏は、こう周囲に語っているそうだ。
中国の国有企業CITIC(中国中信集団)に6000億円投資したが、成果が挙がっているとはいいがたい。
「今春、CITICは知日派の常振明董事長(会長)が退任。後任は中国人民銀行の朱鶴新副総裁」(北京在住の金融関係者)。コロナ政変に怯える習近平政権にとって「国有企業改革」は待ったなしだ。伊藤忠はCITICの動向に最大の関心を払っている。
もし、岡藤氏の野望が潰えることがあるとすれば、「独壇場」(伊藤忠幹部)と自負する中国でハプニングが起きた時だろう。
(文=有森隆/ジャーナリスト)