経営に復帰した渡邉氏は、コロナ禍にどう立ち向かおうとしているのか。緊急事態宣言が出された直後の4月8日から5月25日まで、国内の直営店を休業。採算が取れない居酒屋「和民」や「鳥メロ」「ミライザカ」など65店を来年3月までに閉店する。クローズする店は491店の13%に当たる。今後も需要の回復が見込めない店の撤退に踏み切る。
「マーケットが1地域1店しか許容しないのなら、その規模に合わせるしかない。時代に合わせた店をつくるだけだ」(渡邉氏)
20年4~6月期決算の売上高は前年同期比44.3%減の127億円、営業損益は37億円の赤字、最終損益も45億円の赤字だった。主力の国内外食事業の売上高は21億円と81.4%も激減。営業損益段階で33億円の赤字(前年同期は1億円の黒字)となった。夜の営業が中心の居酒屋はハンバーガーなど他の外食と比べて客の戻りが鈍い。
渡邉氏は、ポストコロナ時代の居酒屋の数は7割程度にまで縮小すると予測している。今後は、家族や女性が利用しやすい業態の開発を進める。その1つが、「から揚げの天才」。揚げたてのから揚げと、実家が玉子焼き店を営んでいるテレビタレントのテリー伊藤氏のノウハウを掛け合わせて誕生した業態。18年11月、大田区梅屋敷に1号店がオープン。19年4月、一般社団法人日本唐揚協会が実施した全国の唐揚げ店人気投票「第10回からあげグランプリ」(東日本しょうゆダレ部門)で「から揚げの天才」は金賞を受賞した。
新型コロナウイルスの影響でテイクアウトに注力。いちやく人気店となった。1個99円(税抜き)の「デカから(白・黒・赤)」と、2分の1にカットした本格玉子焼き(350円)が大人気だという。20年度内に「から揚げの天才」を100店舗出店する予定としている。
もう1つの営業の柱が焼き肉食べ放題の「上村牧場」なのである。家族連れで訪れるには、1人当たり2980~3980円の価格帯は高いという声がある。渡邉氏が進める業態転換は実を結ぶのだろうか。
(文=編集部)