新型コロナウイルスによる臨時休業から再開したばかりの百貨店。お中元商戦は様変わりした。感染防止のため夏の風物詩でもあった特設コーナーを設けず、商品の陳列を見送る店もあった。
それでも全店が営業を再開したことで、入店者数は徐々に上向いてきた。日本百貨店協会がまとめた全国百貨店の6月の売上高は、前年同月比19.1%減。9カ月連続でマイナスとなったが、5月(65.6%減)から大きく改善した。ただし、インバウンドは入国制限の継続で90.5%減。厳しい状況に変化は見られない。地域別では引き続き地方より大都市圏の店舗の苦戦が目立つ。地方(10都市以外の地区)は11.3%減だが、東京地区百貨店は24.3%減と落ち込み幅に倍以上の差がある。
東京地区百貨店では、高級時計やラグジュアリーブランドで「リベンジ消費」が見られた。ネット通販など非店舗売上は21.9%増と5月に引き続き2ケタ増を記録。中元商戦は店頭の苦戦をEC(電子商取引)が下支えし、前年並みの店も出るなど堅調に推移した。
しかし、7月の中間段階の商況は新型コロナウイルスの感染者数の増加を受け、再び外出自粛の気運が高まったことから、東京地区百貨店の売上は30.7%減(7月16日現在)と6月より悪化した。リベンジ消費をテコにした回復の期待は、一気に萎んだ。
大手百貨店では4月から約2カ月にわたって臨時休業などを強いられたため、第1四半期決算は軒並み赤字に転落した。
【主要百貨店の第1四半期業績】( )内は前年同期比増減率(%)
社名 売上高 純利益
三越伊勢丹HD 1316億円(▲53.3%) ▲305億円
高島屋 1162億円(▲48.0%) ▲205億円
J.フロントリテイリング 1134億円(▲58.6%) ▲284億円
(三越伊勢丹は4~6月期決算、高島屋とJ.フロントは3~5月期決算。HDはホールディングスの略、▲はマイナス)
東京や大阪など大都市を本拠とする大手百貨店の業績は近年、訪日客によるインバウンド需要が牽引してきた。だが、今期は訪日外国人による売上は、ほぼゼロになる。「インバウンドゼロ」を想定した業績予想に注目が集まった。
対応は分かれた。高島屋は第1四半期決算を発表した7月上旬の時点で、通期業績予想は引き続き「未定」とした。大丸や松坂屋を運営しているJ.フロントリテイリングは21年2月期の最終損益を黒字予想から一転して260億円の赤字の見込みとした。下方修正の理由は「想定以上の店舗休業期間の継続と売り上げ回復の遅れ」。インバウンドの売上はゼロを想定している。いち早く「脱・百貨店」を掲げ、「ギンザシックス」など不動産賃貸に力を入れ、商業施設のパルコを完全子会社にした。大丸の主要な顧客は40~50代の富裕層だ。今秋、リニューアルオープンさせる大阪市の大丸心斎橋店北館の運営はパルコに任せる。
パルコ化で若い世代と訪日客の取り込みを図る。5月末に就任した好本達也社長は急減した訪日客について「人口減が進む国内客より確実に有望なマーケット」とし、将来的に中国や東南アジアからの旅行客が戻ることに備えるとした。
三越伊勢丹HDは期初に「未定」としていた通期業績予想を開示した。21年3月期の最終損益は600億円の赤字(前期は111億円赤字)になる見通しとした。最終赤字は2年連続。赤字額は店舗閉鎖で損失を出し、過去最大だった10年3月期(635億円)に並ぶ規模になる。