世間の常識では、「死」について誰もその実体を知らないとされているが、「人は死んだらどうなるのか」という難問中の難問に、現在の科学が答えを導き出そうとしている。 日本ではほとんど知られていないが、米国ヴァージニア大学では約60年間にわたって世界各地から「生まれ変わり」の事例を2600以上集め、「生まれ変わり」という現象の謎の解明に努めている。筆者は「生まれ変わり」の主体を「情報」として捉えれば、量子物理学の知見でこの現象が説明できるのではないかと考え始めている。
また日本人の死生観のベースには「生まれ変わり」の信念があったこともわかった。 最新の認知科学の知見によれば、縄文時代の土偶や土器には「生まれ変わり」の信念が表現されており、「死」の概念は希薄だったようである。その後日本にさまざまな外来思想が流入したが、日本人のDNAには「生まれ変わり」の信念が脈々と流れている。高齢者を中心に「長くて緩慢な死」が大多数を占める多死社会が到来しつつある日本の医療現場では、少しずつではあるが「生まれ変わり」の信念がココロの薬となりつつある。
日本では残念ながら宗教家ですら死生観が語れないという現状だが、今後「生まれ変わり」の信念を1人1人が実感できる「ターミナル・ケア」に注目が集まることだろう。
以上のような問題意識から、筆者は『人は生まれ変わる 縄文の心でアフター・コロナを生きる』(株式会社ベストブック)を上梓した次第である。「生まれ変わり」を信じれば、どんな厳しい状況になっても希望を持ち続けることができる。世界に冠たる超高齢社会日本は、「誰もが希望を持ちながら死んでいける社会」を構築することで、「安楽死」問題を乗り越えていくべきではないだろうか。
(文=藤和彦/経済産業研究所上席研究員)