無印良品、初の赤字転落で不振深刻…米国進出が失敗、店舗の“食品スーパー化”に活路

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「Getty Images」より (「Wikipedia」より)

 小売業の“勝ち組”と称された「無印良品」を運営する良品計画は7月10日、米子会社「MUJI U.S.A」が、日本の民事再生法にあたるチャプター11(米連邦破産法第11条)の適用をデラウエア州で申請したと発表した。負債総額は6400万ドル(約68億円)。このうち5300万ドルが良品計画に対する債務だ。

 米国での営業開始は06年。ニューヨークなど一等地の路面店へ出店。ニューヨークやカリフォルニア州で18店を運営している。高い賃料や高コスト構造のために継続的に損失が発生していた。20年2月期の米国事業の営業収益は110億円、最終損益段階で18億円の赤字に陥った。コスト構造を見直し、19年には店舗の賃料の引き下げを軸とする再建策を策定したが、家主との交渉で折り合えなかった。

 そこへ新型コロナウイルスの感染拡大が追い打ちをかけた。3月17日以降、米国内の店舗すべてが営業停止となったことで、売上が急減し採算が悪化した。再生手続きを進めながら事業は継続する。不採算店の閉鎖や賃料の減額交渉などにより、事業構造を抜本的に転換する予定としている。

 米国では小売業が同法を使って賃料減額や店舗閉鎖を進めるのが一般的だという。最近ではブルックス・ブラザーズが申請している。しかし、家賃の引き下げ交渉がスムーズにいくかどうかは不透明だ。新型コロナによる米破産法申請は日本の小売り大手では初めて。良品計画は国内市場の縮小で海外に活路を求めてきた。海外事業の要として力を入れてきた米国事業の頓挫は、今後の世界戦略に影響を与えそうだ。

3~5月期は98年の上場以来初の営業赤字

 良品計画の20年3~5月期の連結決算は、売上高にあたる営業収益が前年同期比29.9%減の787億円、営業損益は28億円の赤字(前年同期は103億円の黒字)、最終損益は41億円の赤字(同65億円の黒字)だった。営業赤字は1998年の上場以来初めてという。

 新型コロナウイルスの影響で、ピーク時には国内全店舗の66%にあたる202店を休業。海外は25カ国・地域の全店を休業したことが響いた。収益性が低下した欧米の一部の店舗で減損損失を計上した。食品や電子商取引(EC)による販売は伸びたが補えなかった。

 未定としていた20年8月期連結業績は、営業収益は1745億円、営業損益は20億円の赤字、最終損益は39億円の赤字の見込み。決算期を2月末から8月末に変更しており、今回は6カ月の変則決算となる。通期としては19年ぶりの最終赤字となる。

食品スーパー化に傾斜

 良品計画の松崎暁社長はウイズコロナ・アフターコロナ時代の消費傾向として、「(1)世界的に都心よりも郊外、(2)日常的なもの、(3)ECという流れ」と指摘する。国内の全436店はショッピングセンター(SC)への出店が主力だが、SC内の店舗はSCが休業すると営業ができない。今後はロードサイドの路面店を積極化する。EC化はどの小売業も取り組んでいるが、20年2月期の国内売上に占めるECの割合は6.8%だったが、中長期的に20%に高める。また、「日常的なもの」としては主力の家具・インテリアや生活雑貨だけがターゲットではなく、目玉となるのは食品だ。

 19年4月にオープンした日本初の「MUJIホテル」に併設した旗艦店は、食を前面に出した店舗であることが話題になった。通常、無印良品の顔となる入口付近は、衣料品の売り場だが、銀座旗艦店は1階に食品売り場を配置した。ベーカリーのほか、野菜、果物、菓子、加工食品、冷凍食品、調味料、弁当、ジューススタンド、ブレンドティー工房など、“デパ地下”のつくりだ。