東京株式市場で6月24日、約2カ月半ぶりに新規株式公開(IPO)が再開した。新型コロナウイルスの感染拡大による新興市場の株価急落を受け、IPOが次々と延期されていた。
買い物情報サービス「トクバイ」を運営するロコガイド、画像認識ソフトウエア開発のフィーチャ、実演販売を中心とした卸売業のコパ・コーポレーションの3社が東証マザーズに上場した。コロナ禍から株式市場の本格的な復活を象徴するイベントは狂騒に包まれた。個人投資家の投資余力は十分で、値幅を取りたいマネーが集中した。
午前9時の取引開始前の気配値は、フィーチャとロコガイドは公開価格の4倍、コパは2倍に達した。取引が始まるとフィーチャは買い注文が売り注文の14倍に達した。IPO株の抽選に当たり公開価格で株を手に入れた個人投資家は大幅な値上がりをみて「こんな幸福があるのか」と喜びを隠せず、思わずツイートした。
フィーチャとコパは気配値をそれぞれ公開価格の2.3倍まで切り上げたが売買は成立せず、初値を翌日以降に持ち越した。コパは25日、公開価格の2.3倍の4530円の初値をつけた。フィーチャは2日後の26日にやっと売買が成立。初値は公開価格の9.1倍の4710円までふっ飛んだ。
一方、ロコガイドは上場初日に4605円の初値をつけた。公開価格(2000円)の2.3倍である。終値は5310円まで上昇した。あまりの狂騒ぶりに過熱への警戒感が急激に高まった。コパは5900円まで上昇したが、7月8日の終値は4410円と初値を下回った。7月13日の終値は4590円(390円高)。フィーチャも5410円の高値をつけたが、7月8日の終値は3675円で初値を割り込んだ。7月13日には2980円まで下げた。高値から45%崩落したことになる。
対してロコガイドの株価は右肩上がりの値上がりを続けた。7月8日の終値は前日比640円(8.5%)高の8150円。上場来高値を更新した。初値の1.77倍だ。7月13日には一時、8780円(920円高)。さらに上場来高値に進んだ。3銘柄のなかで断トツの軽い値動きを続けている。
ロコガイドは著名な経営者・穐田誉輝社長が率いるとあって注目度が高く、個人のみならず機関投資家も買っているとの観測も聞かれた。「穐田買い」の様相を呈したわけだ。
穐田誉輝氏は青山学院大学経済学部卒。ベンチャーキャピタル大手の日本合同ファイナンス(現・ジャフコ)を経て独立。99年、ベンチャー投資を行うアイシービーを設立した。価格比較サイト価格.comを運営するカカクコムに出資、2001年、社長に就いた。カムコムは03年に東証マザーズ、05年東証1部に上場した。上場という使命を果たしたことで穐田氏は06年に社長を退いた。カカクコムは価格比較サイトとグルメサイト「食べログ」を2本柱に急成長。ネット企業の“勝ち組”の1社と評された。
次に穐田氏が投資したのがクックパッド。創業者の佐野陽光氏は慶應義塾大学環境情報学部卒。97年10月、コイン(現クックパッド)を設立、料理レシピの検索・投稿サイトを立ち上げた。主婦たちが自分でつくった料理のレシピを投稿するサイトとして人気を集めた。
クックパッドは創業後8年間営業赤字が続き、経営は大苦戦していた。このとき、創業間もないベンチャー企業に資金を提供するエンジェルとして穐田氏が登場する。ベンチャーキャピタリストとして07年12月、クックパッドに出資、社外取締役に就任。上場を指南し、09年7月、東証マザーズに上場(11年に東証1部に指定替え)。穐田氏は14.78%を出資する第2位の大株主となった。