中小企業にとって社員は「人財」とも言うべき大切な存在。「ヒト」「モノ」「カネ」の「モノ」「カネ」で、大企業と競うことが難しいのであれば、「ヒト」を育成し、会社の理念やビジョンにコミットしてもらうことが求められます。
まさに、環境が激変した今こそ、ベクトルがそろった組織ほど強く、勝ち組として成長し続けることは間違いないでしょう。
では、そうした会社に成長するためにはどうすればいいのか。その一つのカギを握るのが「人事評価制度」です。
人事評価制度は社員のモチベーションを左右する重要な制度です。ここでしっかり社員が感じている問題をすくいあげ、評価者からフィードバックすることができれば、社員は大きく成長するでしょう。
一方、評価制度が上手く運用されておらず、評価されているのかどうかもわからない、適切なフィードバックもないとなると、「この会社にいる意味はあるのか」「もっと認められる会社に行こう」と、優秀な人材が流出してしまいます。
しかし、経営者が人事評価制度の導入を決めると、必ずといっていいほど異論が噴出するものです。現場から後ろ向きな発言や単純な文句などネガティブな声が高まり、最終的に導入を断念してしまう。これは中小企業の現場“あるある”と言える光景です。
しかし、「不満が出ない人事評価制度改革はない」と述べるのは、1000社以上の人事制度を研究してきた山元浩二さんです。
山元さんは、最初から全員が納得いく評価制度はないとしたうえで、一つ一つ問題をクリアにして、解決しながら定着させていくしかないと述べます。
では、人事評価制度の定着と成果を上げることを阻む要因はどこから上がるのでしょうか。
山元さんの著書『改訂新版 小さな会社の人を育てる人事評価制度のつくり方』(あさ出版刊)には次の3つがあげられています。
1.評価者(リーダー)の不満
2.社員の不満
3.評価結果や賃金制度が活用できない
(p.175より)
では、一つずつ見ていきましょう。
まずは「評価者(リーダー)の不満」です。
中小企業のリーダーはほぼ例外なくプレイングマネージャー。個人で売り上げ目標を課せられつつ、チームもマネジメントをしないといけない。その上に評価まで…。正直な気持ちは「自分のことだけで精いっぱい」でしょう。
この状況の対処法は、「評価制度=人材育成の仕組み」という意識付けをリーダーに徹底することだと山元さんは言います。また、もう一つ重要なことは、「評価制度=給与や賞与を決める一つのプロセス」という認識をなくすことです。評価制度は何のためのやるのか、その入り口を定義する必要があるのです。
続いて、「社員の不満」。
「こんなことやってもムダだろう」「自分の評価がこんなに低いのはおかしい」といった声が上がるかもしれません。しかし、そうした不満は、水面下でくすぶっていたものです。自社の成長に必要なヒントが隠されているので、一つ一つ余裕をもって対処していきましょう。
最後の「評価結果や賃金制度が活用できない」。
評価制度を運用してみたものの、昇給や賞与の額は結局経営者が決めているというパターンです。また評価結果に対して妥当性が得られないということもよくあるでしょう。仕組み化してそれを回していても、定着をしないのは、納得度が低いから。
これについて山元さんは、1、2回の運用では、経営者の考える理想の評価制度運用と、社員側が納得できる運用をぴったり一致させることはできないと指摘します。
こうした問題からなかなか定着しない人事評価制度。山元さんが上梓した『改訂新版 小さな会社の人を育てる人事評価制度のつくり方』で提唱している「ビジョン実現型人事評価制度」は、こうした課題への対策を盛り込んで設計されています。
これは、賃金制度を中心に置かない評価制度であり、より優先されるのは人材育成、そして経営計画の達成です。
本書ではその運用方法を図を交えて説明していくため、忙しい経営者でも分かりやすく、すぐに実行に移すことができるようになっています。
企業が継続的に成長するには、顧客や地域など周囲からの支持が必要。そしてその支持を作り出すのは、人材です。山元さんの提案は、評価制度がなかなか定着しない、人材がなかなか成長しないといった悩みをクリアにしてくれるはずです。(新刊JP編集部)
※本記事は、「新刊JP」より提供されたものです。