障害続出のモバイルWi-Fi、もはや“過去の遺物”?スマホのテザリングが当たり前に

5G登場で追い詰められていくモバイルWi-Fiルーター

 障害や速度制限といったトラブルが発生したものの、テレワークの普及によって注目度が高まっているモバイルWi-Fiルーター。しかし、この特需が収まった後は厳しい状況になるのではないかと法林氏は語る。

「この2、3年の流れを見ると、モバイルWi-Fiルーターで有名だったワイモバイルが、今は格安SIMをセールスポイントにしているように、年々利用者は減っていっています。その理由は2つで、ひとつはスマートフォンのテザリング機能が当たり前になったこと、もうひとつはスマートフォンの使用通信量が増えたことにあります。

 特に5Gのデータ容量無制限サービスの開始は大きな逆風ですね。まだ契約者数は数万程度ですが、5G対応端末を購入して契約を切り替えれば4Gのネットワークに接続しても使い放題なので、そちらのほうが便利だと考えたユーザーがこれから5Gに流れていってしまうのではないでしょうか。

 逆にいえば、全体的に利用者が減ってきているという背景があったからこそ、需要をある程度見越して、疑似的な使い放題サービスの提供を開始した通信事業者が次々に現れたわけです」(法林氏)

 5Gという強力なライバルの出現で逆境のただなかにあるようだが、今後はどうなっていくのだろうか。

「在宅勤務や出張先での通信環境構築のために、会社が社員にモバイルWi-Fiルーターを持たせるというケースがあるので、法人に対してはまだ一定の需要が存在しています。ですが、個人となるとやはりこれから利用者はさらに減っていくでしょう。

 また、携帯電話会社のように、自分たちで設備を持っているわけではないのでパフォーマンス面でも不利ですし、契約内容も1年間解約できないなど過度に束縛してしまうようなものだとユーザーに敬遠されてしまうので、非常に難しい状況にあります。

 今後モバイルWi-Fiルーターを提供する通信事業者が生き残っていくには、5G対応の新製品などを出すことでアピールしていけるか、魅力的な料金プランを提示できるか、サービスの内容でユーザーとの信頼関係を構築できるか、という点が重要になるのではないでしょうか」(法林氏)

 年々個人での利用者が減少傾向にあるという窮地にあるモバイルWi-Fiルーター。テレワーク特需が落ち着いた頃に、モバイルWi-Fiルーターを取り巻く環境がどうなっていくのか注目される。

(文=佐久間翔大/A4studio)