「今はまだ言えないが、秘策もある」と似鳥氏。アパレル大手の買収か、とアパレル業界は色めき立った。
5月7日の東京株式市場。アパレル大手オンワードホールディングスの株価が45年ぶりの安値(319円)をつけた。2年連続で700店ずつ店舗を閉鎖する予定で、20年2月期の連結決算は521億円の最終赤字だった。
アパレルは存亡の危機だ。三陽商会は2015年、キラー・コンテンツだった「バーバリー」のライセンス契約が切れて以降、4期連続の赤字。ジリ貧が続く同社の再生は容易ではない。
三陽商会をめぐっては、大株主の米ファンド、RMBキャピタルが社外取締役による経営刷新を求め、株主提案する構えだ。5月26日開催予定の株主総会では経営側とファンドの委任状争奪戦に発展するかもしれない。
三井物産は三陽商会の実質筆頭株主(名義は日本トラスティ信託口)である。「物産は直接社長を出す代わりに、ゴールドウィンに転じた大江伸治氏を3月1日付で副社長に送り込んだ」(物産の元役員)。物産の旗印を背負った大江氏がファンドを迎え撃つ。ファンドを退けた後の大江氏の最後の大仕事は、「三陽商会の“嫁入り先”を見つけること」(アパレル業界の首脳)である。レナウンも中国資本の傘下に入ったが、日本人の社長が株主総会で再任されなかったりしており、先行き不透明だ。
コロナ禍で上場アパレルには他にも“出物”が増えている。ニトリが買う気になれば、よりどりみどりなのである。
(文=編集部)