住所やクレジットカードの情報、交友関係と連絡の履歴、インターネットの閲覧履歴……。
スマホの中は個人情報でいっぱいだ。だからこそ、どんなに親しい友人や家族であっても、スマホには触らせない。
そんな大事なスマホだから、持ち主が亡くなった場合が大変だ。スマホの中に保存されている写真やメール、各種データ、自分のSNSのページなども「遺品」となるからである。スマホはデジタル遺品なのだ。
『スマホの中身も「遺品」です-デジタル相続入門』(古田雄介著、中央公論新社刊)では、2010年から亡くなった人が残したSNSページやブログ、ホームページの追跡調査を始め、死生やデジタルをテーマに多くの記事を執筆しているフリー記者の古田雄介氏が、オフィスや家庭で起こるパソコンに関するトラブルや疑問、いまさら聞けない用語や規格、知っておくと便利なテクニックを解説する。
自分自身が遺す立場として、趣味の物やお金のこと、お墓についてなどを前もって整理しておく終活が話題となったが、今の時代はスマホをはじめとしたデジタル終活術もやっておくべきだろう。自分が死んだ場合、自分の持ち物を代わりに処理してくれるのは遺族や代理人などの他者。デジタル遺品もそれは同じだ。
ただ、デジタル環境は持ち主が使いこなすほどにカスタマイズされていき、他者からは全容が分かりにくい。なので、デジタル終活でまずやるべきことは「今持っているものの再確認」となる。再確認して整理し、普段から分類して分かりやすい動線をつくっておくことが大切なのだ。
まずはデジタル資産のリストアップをする。持ち物が遺品になったときの対応の優先順位をつけるときは、客観的な指標と主観的な指標をクロスさせると漏れが抑えられる。
客観的な指標とは、思い入れと関係なく、そのままにしておくと差し障りのあるものと、そうでないものを分ける基準。たとえば、ネット銀行の口座や金融資産、進行中の仕事のデータ、定額サービス契約や家族の個人情報と直結するような公開ファイルは、客観的に見て処理が必要なデジタル資産といえる。
主観的な指標は、自分や家族、友人などの感情面を基準とする。家族や仲間に「託したい」「伝えたい」、家族や仲間が「託してほしい」「伝えてほしい」と思う共有性の高いものと、自分自身が「隠したい」と思う私的なもの、の2グループに分ける。
こうして整理したものの中で、口座や金融資産は「放置リスクが高いもの」と「託したいもの」のグループに入れ、確実に家族に伝わるようにしておく。一方、海外ネット銀行の口座や個人取引で手に入れた仮想通貨をへそくりとして持っている場合、死後まで隠し通すのは家族にとってもリスクが大きい。このような「放置リスク高」と「隠したい」の掛け合わせのものは設けないようにするのが得策だろう。
本書では、ここで取りあげた遺す立場としてだけでなく、遺族としてのデジタル遺品整理術も紹介。故人のスマホやパソコンをどう扱っていいか分からない、という事態は、想像するだけであり得ることだ。もしものときに困らないためにも、自分のスマホの中身の整理術、遺族としてのデジタル遺品整理術を知っておくべきだろう。
(T・N/新刊JP編集部)
※本記事は、「新刊JP」より提供されたものです。