無印良品、好調でも暗雲垂れ込める…ニトリと全面対決の様相、新型コロナの余波も

ニトリとの競合度合い高まる

 家具の販売ではニトリホールディングス(HD)が展開する家具チェーン「ニトリ」や、雑貨店「デコホーム」との競争が激しくなっている。少し前までニトリは郊外ロードサイドを主戦場としていたため、同立地にあまり店舗がない無印良品との競合度は低かった。しかし、近年はニトリやデコホームが都市部や商業ビルに積極的に出店するようになり、同立地を得意とする無印良品との競合度は高まっていった。これが影響し、無印良品の家具の販売が落ち込んだ面がある。

「ファブリックス」(布製品)もニトリHDの脅威にさらされている。直近本決算の19年2月期のファブリックスの売上高は、前期比1.2%減と落ち込んだ。また、家具は4.7%増だったが、全体が8.9%増と大きく伸びているので、家具は伸び悩んだといえるだろう。家具とファブリックスは18年2月期も伸び悩んでおり、全体が11.2%増だったなか、家具が0.3%増、ファブリックスが7.2%増にとどまっている。17年2月期も同様に伸び悩んだ。

 ニトリHDの攻勢はまだまだ続いているので、当面は無印良品の家具とファブリックスが苦戦を強いられる可能性は低くない。

 現在好調の衣服・雑貨も、中長期的にはニトリHDにやられる可能性がある。無印良品は中価格帯の衣料品を扱うが、最近、ニトリHDが中価格帯の衣料品を扱う店舗を本格展開し始めたためだ。

 ニトリHDは「N+(プラス)」のブランドで女性向けの衣料品の販売を始めた。将来における家具の頭打ちを見越し、新たな収益源として衣料品に目をつけたというわけだ。現在、東京、埼玉、千葉の1都2県に4店舗を展開している。商品のデザインはどれもシンプルで、価格帯は定価で1点2000~5000円程度だ。

 Nプラスと無印良品の衣料品は、デザインがシンプルという点で共通している。ただ、趣はやや異なるので、デザインにおいて真正面からぶつかることはなさそうだ。もっとも、価格が同程度のため、まったく競合しないとはいえないだろう。

 Nプラスは現状わずか4店舗しかなく、無印良品にとって脅威ではない。だが、近い将来に急激に店舗網が拡大する可能性がないわけではない。ニトリHDが規模の大きい衣料品チェーンを買収して傘下に収め、手に入れた店舗をNプラスに転換して一気に店舗数を増やすことも考えられる。そうなれば無印良品にとって大きな脅威となるだろう。

 こうしたことを考えると、良品計画の業績が現在好調でも、安穏とすることはできない。短期的には、新型コロナウイルスの影響で業績が大きく悪化する恐れがある。中長期的にはニトリHDとの競争激化で大きな打撃を被る可能性がある。十分注意する必要があるだろう。
(文=佐藤昌司/店舗経営コンサルタント)

●佐藤昌司 店舗経営コンサルタント。立教大学社会学部卒。12年間大手アパレル会社に従事。現在は株式会社クリエイションコンサルティング代表取締役社長。企業研修講師。セミナー講師。店舗型ビジネスの専門家。集客・売上拡大・人材育成のコンサルティング業務を提供。