――環境の変化を恐れないということでしょうか。
藤井 私は「現代版の百姓のススメ」を提案します。これは、田畑を耕すだけではなく、雨の日には俳句を詠み、またある日には竹とんぼをつくって子どもたちを楽しませるなど、一人ひとりがさまざまな役割を果たすことを指します。昔は1人の人間にいろいろな顔や役割があったのですが、今の会社員はひとつの顔しか持っていない。これは非常にもったいないことです。
リクルートエージェントではミドルシニアの方も対象にカウンセリングを行っていますが、「自分は他人から見るとこういう面があり、こんな持ち味があるのか」という気付きを得て、自信を持たれる方が多いです。今いる会社の評価基準とは別の鏡で映してあげると、輝くことができる場所はほかにもたくさんあるということです。
――何か具体例はありますか。
藤井 生命保険会社の営業管理職から菓子メーカーの品質部長に転職して、活躍している人がいます。一見、関係のない業種・職種のように感じますが、女性同士でチームワーク良く働く組織運営能力など、実は共通したスキルが求められていました。また長年、呉服店で接客をしていた方が介護施設の施設長に転身したケースも大成功しています。会話などで、高齢者の気持ちを察する洞察力に長けていたからです。
ミドルもシニアも、自分では気づかない隠れた可能性を秘めているものです。そのため、自分を多重的に活用することで働き方はもっと豊かになります。
――若手ビジネスパーソンには、近年の傾向などはあるのでしょうか。
藤井 今、日本は多くの社会課題を抱えていることもあって、社会問題の解決に関心を向ける若者が増えています。「ソーシャルセントリック」志向と言うのですが、社会的な使命を担っている組織やNPO法人で働きたいという意志を持つ人が増えているのです。これは、目的や理念もなく上場してボロ儲けしたり、その利益を顧客価値や社会変革に還元しないで豪遊……という人たちが、結局うまくいかなかったのを見ていることも影響しているのではないでしょうか。
(構成=長井雄一朗/ライター)