結果的に、要件の確認が済んで無償化の対象となった大学(短大も含む)の割合(19年12月20日時点)は非常に高かった。合格したのは、国立82校(100%)、公立106校(100%)、私立866校(100%)となっている。ただ、私立大学の場合は897校あり、31校が未申請だ。そのため、要件の確認割合は未申請を含めると96.5%となっている。
前述の(4)にかかわる、経営に問題のある大学に関しては、次のような確認要件であるが、比較的客観的である。
(1)法人の貸借対照表の「運用資産-外部負債」が直近の決算でマイナス
(2)法人の事業活動収支計算書の「経常収支差額」が直近の3年間の決算で連続マイナス
(3)直近3年間で連続して収容定員充足率が8割を切っている
この、いずれにも該当する場合は適用しない。すなわち、債務(負債)超過で3年間赤字で収容定員充足率が8割未満という高等教育機関である。
こういうと、8割未満の定員割れの私立大はけっこうあるはずだ、という声もありそうだが、この3条件に当てはまる大学は意外と少ない。定員割れについても、収容定員の減員申請をして充足率の分母を少なくし、充足率を上げるという離れ業もある。
忘れてはならないのは、専門学校に進学する生徒だ。全国で2713校ある専門学校(高等専門学校は除く)に関しては、申請が1696校、要件確認校が1689校と確認された比率は高いものの、未申請を含めると全体の62.3%にすぎない。残りの37.7%の専門学校に入学した学生は、たとえ年収の条件が当てはまったとしても、無償化の恩恵を受けられないのだ。
専門学校の生徒というと、一般的に学力的に大学に行けない生徒というイメージで語られるが、なかには家計が厳しいので短期間で職業能力を身につけたい、という生徒も少なくない。そのような生徒こそ、無償化の対象にふさわしいのではなかろうか。
現在、私立専門学校(高等専門学校を除く)の在学者数は約57万4000人である。未確認の専門学校は比較的小さな学校であろうが、地方では地元の国公立大に合格できない受験生は、地元には希望する私立大が少ないため、近くの専門学校を選ぶ傾向もある。その場合、志望の対象が無償化から外れた専門学校というケースもあり得る。
この専門学校における38%弱の要件未確認校の存在は、将来的に高校生が進学先を選ぶ上でも大きなトラブルの元になると思う。
(文=木村誠/教育ジャーナリスト)
●木村誠(きむら・まこと)
早稲田大学政経学部新聞学科卒業、学研勤務を経てフリー。近著に『「地方国立大学」の時代?2020年に何が起こるのか』(中公ラクレ)。他に『大学大崩壊』『大学大倒産時代』(ともに朝日新書)など。