希望退職による人員削減が決まったので、ファミマのリストラはこれで一区切りついたといえる。今後は成長戦略に焦点が移る。最近は24時間営業問題で隠れがちだが、商品力を高めて日販(1店舗の1日当たり売上高)を向上させることが求められている。ファミマは澤田貴司社長がインタビューでコンビニ飽和論を唱えるなど、出店による成長に否定的なため、競合のセブン-イレブン・ジャパンやローソン以上に日販の向上が重要といえる。
だが、ファミマの日販はセブンとローソンに水をあけられている。ファミマの19年3~11月期の日販は53.4万円だった。セブン(同66.0万円)とは12万円以上の差があり、その背中は依然として遠い。ローソン(同54.0万円)との差も広がっている。
もちろん、対策は講じてきている。19年3~11月期は中食の商品力強化を図ったこともあり、おにぎりや総菜・冷凍食品ブランド「お母さん食堂」が好調だったという。お母さん食堂では、昨年9月に発売した「麻婆豆腐丼」などワンプレート型の冷凍食品が好調だった。また、総額200億円を投じ、店舗でいれるコーヒーの新型機を全店に導入したので、特に「カフェラテ」の販売が好調に推移し、売り上げをけん引した。
こうした施策でファミマの日販は上昇傾向にある。ただ、セブンとローソンに水をあけられている状況から、大きな成果を上げたとは言い難い。
無断発注問題も尾を引いている。昨秋にセブンの本部社員がFC加盟店におでんを無断で発注する問題が起きたが、今年に入ってファミマでも本部社員によるFC加盟店での商品の無断発注が発覚した。セブンは無断発注の事実を認め、社員2人を懲戒処分にするなどして鎮静化を図った。一方、ファミマは対応を検討しているが、今のところ結論は出ていない。火種がくすぶったままの状態で、対応によっては大きな批判を招きかねない。
24時間営業問題では、ファミマは加盟店に寄り添う姿勢を見せ評判を上げた感があるが、今後の舵取り次第では風向きが変わりかねない。リストラで体制固めに一区切りがついたこともあり、今後は風向きが変わらないよう注意しつつ、着実に成長を果たしていくことが求められている。
(文=佐藤昌司/店舗経営コンサルタント)
●佐藤昌司 店舗経営コンサルタント。立教大学社会学部卒。12年間大手アパレル会社に従事。現在は株式会社クリエイションコンサルティング代表取締役社長。企業研修講師。セミナー講師。店舗型ビジネスの専門家。集客・売上拡大・人材育成のコンサルティング業務を提供。