新型コロナウイルスによる肺炎の感染拡大による経済的な影響が、目に見える形で現れはじめた。新型肺炎のまん延防止のため、3月1日に東京都新宿区などを中心に行われる予定だった「東京マラソン2020」で17日、一般参加者の出場が取りやめになった。出場者3万8000人が「エリート選手」のみの200人に縮小されるという未曽有の事態に、新宿区内の宿泊事業者は悲鳴を上げている。
18日、宿泊予約サイト「trivago(トリバゴ)」で2月29日チェックイン、3月1日チェックアウトの条件で空室状況を検索してみた。すると有名ホテルからビジネスホテルまで赤字で表示された割引プランが並んだ。1週間前はどこも満室だったのだが、18日午後6時半現在で新宿ワシントンホテル本館は46%引きの1万5955円(エコノミー、ダブル、大人2名)、ダイワロイネットホテル西新宿は69%引きの1万6529円(スタンダードツイン、大人2名)など、いつも「ちょっとお高いホテル」と言われている宿が、軒並み値を下げた。本来であれば企業の人事異動や卒業旅行シーズンの書き入れ時のはずだ。
東京マラソンのツアープランを企画していた旅行代理店関係者は疲れた様子で話す。
「マラソンは比較的、中高年から高齢者の需要が高いです。東京マラソンは国際大会でもあり、個人的な記念にもなるので人気です。宿泊プランを企画し、国内外から多くのファンを集客していました。しかし、昨日の一般参加者中止の報道には社内で悲鳴が上がりました。以後、宿泊キャンセルの連絡が殺到しています。本来であればかなり強気の価格設定でも満室になるホテルでも、一気にキャンセルが出ました。東京マラソンは毎年定期開催されて、集客が望める優良イベントでした。我々も宿泊業界もそれを見込んで年間の事業計画を立てています。もはや半額にしてでも、損失を埋めなければいけません。
しかも、出場料金は返却されないという大会運営の方針になったことで、せめて宿泊料金や交通費は取り戻したいというお客様が多く、基本的に皆さんお怒りになられていて現場は疲弊しています」
また、大手ホテル従業員は次のように話す。
「新型肺炎に伴って中国から春節ツアー旅行のキャンセルが相次いでいたところに、東京マラソンの一般参加中止に伴う宿泊キャンセルは非常に痛いです。会社上層部は、営業担当に『なんでもいいから代替になる客をつかまえてこい』と指示しているようですが、簡単には団体客を押さえることはできそうにありません。コロナウイルスが収束しなければ国内旅行の縮小や出張の減少、東京など過密地域への修学旅行や研修旅行などの中止なども考えられます。お先真っ暗です」
毎日新聞インターネット版は17日、『東京マラソン 一般の参加料は返金せず 国内ランナー1万6200円 来年の出走権付与』と題する記事で「取りやめによる参加料の返金はなく、来年の出走権が与えられるが、再度、参加料が必要になる」と報じている。参加費込みで団体ツアープランを作成していた代理店もあったため、予約キャンセルに伴う混乱に拍車がかかっているようだ。
相当な被害が生じているが、これはまだ序の口だ。一連の混乱が収まらなければ、この数百倍、数千倍の規模の混乱が7月の東京オリンピックに降りかかることになる。
(文=編集部)