ディズニーR、強気な大幅値上げでも成功する…客離れは限定的、まだ値上げの余地あり

 もっとも、少し前までは顧客満足の順位は低下していた。14年度までは1~2位を維持していたが、15年度は11位に急落、16年度に27位、17年度は36位に後退した。しかし、18年度は一気に8位に急上昇したのだ。18年度の顧客満足スコアは81.1となり17年度(77.1)から大きく上昇した。そして19年度第3回調査では81.9となった。近年は顧客満足の順位とスコアが上昇傾向にある。根強いファンがいることの証左といえるだろう。

 ライバルのユニバーサル・スタジオ・ジャパン(USJ)が値上げを続けているにもかかわらず好調なことも、値上げによるTDRの顧客離れが限定的と考える根拠のひとつだ。

 USJは18年1月末に9年連続となる値上げを実施した。大人1日券は300円引き上げて7900円にした。これは現在のTDRよりも高い。このように値上げを続けても、入園者数は16年度まで3年連続で増加した。17年度以降は入園者数の正式な公表が行われていないので正確な数値は不明だが、17年度も前年を上回ったことが確実視されている。18年度も入園者数は落ちていないとの見方が大勢を占める。映画『ハリー・ポッター』エリアの誘致などでパークの魅力が高まったことが功を奏し、値上げに対する不満を和らげることに成功しているのだ。

 USJは19年1月10日にも実質的な値上げをしている。混み合う時期に応じて価格を変える「変動価格制」を導入し、これによりチケット価格は時期によって異なるようになった。たとえば、今年のゴールデンウィークのピークとなる5月2~5日の大人1日券の価格は8900円だが、連休最終日の6日と平日の7日、8日は7800円と一気に1100円も下がる。このように価格が変動するため比較が難しいが、導入前の価格(7900円)より高い日が多く、全体では値上げの色が濃い。

 詳細は不明だが、価格変動制の導入で入園者数が減ったという話や不満の声はほとんど聞こえてこない。USJの現状の価格は、概ね受け入れられているのではないか。

海外のディズニーパークより安いTDR

 海外と比べて価格が安いことも根拠のひとつだ。ディズニーランドは東京のほか、米カリフォルニア、フロリダ、中国・香港、上海、仏パリの世界6都市に展開しているが、日本が最安値でカリフォルニアの約半分だ。6都市の生活水準などを考えても、TDRの値上げの余地はまだまだあるのではないか。

 こうしたことを総合的に考えて、TDRの今回の値上げは成功すると筆者は考える。入園者数は減る可能性があるが、減ったとしても一部にとどまり、一方で来園者1人当たり売上高が大きく高まり、オリエンタルランドの収益性は向上するだろう。

 オリエンタルランドの前期(19年3月期)の連結決算では、売上高(5256億円)と営業利益(1292億円)がともに過去最高だった。だが、今期(20年3月期)見通しは売上高が前期比4.1%減の5038億円、営業利益が15.8%減の1088億円の減収減益となる。そうしたなか、4月からの値上げで収益性を高め、来期(21年3月期)は増収増益を達成したいところだろう。いずれにせよ、この値上げの動向に関心が集まる。
(文=佐藤昌司/店舗経営コンサルタント)

●佐藤昌司 店舗経営コンサルタント。立教大学社会学部卒。12年間大手アパレル会社に従事。現在は株式会社クリエイションコンサルティング代表取締役社長。企業研修講師。セミナー講師。店舗型ビジネスの専門家。集客・売上拡大・人材育成のコンサルティング業務を提供。