イオンもセブン&アイもGMS事業1つで他事業の巨額利益を“帳消し”にする構造抜け出せず

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イトーヨーカドーの店舗(「Wikipedia」より)

 総合スーパー(GMS)の苦境が鮮明だ。イオンは年間売上高が8兆円を超える流通最大手だが、GMS事業が赤字を垂れ流し全体の利益を食い潰している。同6兆円超のセブン&アイ・ホールディングス(HD)も、傘下のGMSであるイトーヨーカ堂が足を引っ張っている。

 まずはイオンの足元の業績を確認する。2019年3~11月期連結決算は、売上高にあたる営業収益が前年同期比0.8%増の6兆3870億円、営業利益が5.4%減の1030億円、純損益が63億円の赤字(前年同期は6億3000万円の黒字)だった。

 利益が大きく減ったのは、連結子会社イオンディライトの子会社で判明した不適切会計に関連する費用を19年3~5月期に計上したことが響いたためだ。その影響を除いた場合の営業損益と純損益は増益だったという。そのため、不適切会計の影響がなければ、決算内容は決して悪くはない。ただ、GMS事業では相変わらず低利益率にあえいでおり、安穏とはしていられない状況にある。

 19年3~11月期のGMS事業の営業収益は前期比0.2%増の2兆2766億円、営業損益は181億円の赤字(前年同期は188億円の赤字)だった。営業収益は微増にとどまり、営業損益はわずかに改善したものの、依然として巨額の赤字を計上し続けている。もっとも、3~11月期は毎年営業赤字の一方で通期は黒字であることが少なくない。だが、黒字であったとしても利益率は極めて低い。19年2月期通期のGMS事業の営業利益率は、わずか0.4%にすぎない。

 イオンは連結営業利益の大半を不動産と金融、ドラッグストアの3事業で稼いでいる。19年3~11月期は、不動産事業で437億円、金融事業で396億円、ドラッグストア事業で222億円を稼ぎ出しており、これら3事業の営業利益の合計額(1057億円)は連結営業利益(1030億円)を超えている。一方、GMS事業の営業損益は181億円の赤字で連結営業利益を食い潰している。

 もちろん、イオンは手をこまねいているわけではない。GMS改革を推進し、対策を講じている。たとえば、買った商品をすぐに食べたいという「即食需要」を取り込むため、できたての飲食料品をその場で味わえる「ここdeデリ」の展開に力を入れている。

「ここdeデリ」ではイートインと飲食店、食品の物販店を集積させており、利用者は飲食店が販売するステーキやすし、パスタ、食品の物販店が販売する弁当やおにぎり、サンドイッチ、総菜などをイートインで食べられる。即食需要を取り込み、収益を向上させたい考えだ。

 対策はほかにもある。米国発祥の大型セール「ブラックフライデー」を開催し、物販の消費喚起を行ったりもしている。昨年の11月22日から26日までの5日間、イオングループの約510店でブラックフライデーを開催した。うち、GMSを運営するイオンリテールは本州と四国の約400店で開催。衣料品の半額企画やホームファッション商品の冬物値下げ、タイムサービスなど特別企画が好評だったという。ブラックフライデーが功を奏し、11月の既存店売上高は、消費増税の翌月にもかかわらず前年同月比0.9%増とプラスを確保した。

 こういった施策を講じ、ある程度は成果を出せている。だが、全体の流れを変えるには至っていない。さらなる施策が必要だろう。

セブン-イレブンの利益を食いつぶすイトーヨーカ堂

 こうしたGMSの苦境はイオンだけではない。イトーヨーカ堂も同様に苦境にあえいでいる。

 まずはセブン&アイHDの足元の業績を確認したい。19年3~11月期連結決算は、営業収益が前年同期比1.9%減の4兆9755億円、営業利益が4.9%増の3190億円、純利益が8.8%増の1699億円だった。