もともと『おっさんずラブ』シーズン1の爆発的な人気は、公式インスタグラムやツイッターでの発信力の高さゆえのものという声も多かったのだという。
「シーズン1放送時の『武蔵の部屋』は、撮影中のオフショットをアップしたり、視聴者と同じような目線で感想を投稿したりといったこともあり、ファンと一緒に上手に作品を盛り上げていたんですよ。だからこそSNS上で『おっさんずラブ』は大きく拡散し、SNS上で感想などを投稿しながら楽しむファンが多かったわけです。
しかし、シーズン2になってSNS担当者の変更もあったようで、ファンの気持ちをうまくくめなくなり、逆効果とも思えるような運用が続いてしまった。その結果SNSでは、シーズン2の“アンチ”も多数確認されるようになり、批判的な投稿が増えるという展開にもなりました。シーズン1では制作サイドがSNSをうまく使っていたからこそ、ファンにとっては裏切られたという思いがなおさら強くなったのでしょう。シーズン1におけるSNSの好運用がなかったならば、もしかしたらシーズン2への批判も少なかったかもしれない。『おっさんずラブ』の事例は、コンテンツにおけるSNS運用の難しさを象徴するような出来事ですね」(メディア関係者)
うまく使えば多くのファンを獲得できるが、下手を打てばアンチを増やしてしまうSNS。現代のコンテンツビジネスにあって、それはまさに諸刃の剣ともいえそうだ。
「SNSはどうしても、運用している人のパーソナリティーが反映されやすい。いわゆる“中の人”のワードセンスや写真を選ぶセンスも必要になるし、ファンとどれくらいの距離感を保つかという点も重要。また、番組のアカウントはあくまでも個人のものではないので、“中の人”の個性を出しながらも、“いかに暴走しないか”ということも大切になってきます。
『おっさんずラブ』に関しては、シーズン2に移行したタイミングで、シーズン1で成立していた絶妙なバランスが崩れてしまった。SNSがシーズン1の成功にどれだけ寄与したかを制作サイドがしっかりと理解していれば、こういった失敗もなかったように思います」(前出・メディア関係者)
商品プロモーションにおいて、SNS運用が大きな意味を持つものとなっている現在。なればこそ、それがビシッとハマるかどうかは本当に難しいところ。せっかくうまくいっていたSNSの運用を自らの手で破壊してしまった『おっさんずラブ』の制作陣の行為は、まさに愚行そのものといえるのではなかろうか。
(文=編集部)