消費増税、景気への悪影響が鮮明…GDPに表れない“消費引き締め”の実態、五輪効果も終焉

 また、飲み会などを含めた一般消費については、地方都市圏で不調の声が大勢を占めている。

消費税の引上げの影響で客の財布のひもが固く、衝動買いは皆無である。また、この冬 場は気温が高く、白菜など鍋材料の動きが悪い」(中国=スーパー)

「消費税の引上げが徐々に効いてきており、予約状況からも徐々に財布のひもが固くなっ ていることがうかがえる。客層の二極化が進んでおり、中間層の客がいなくなっていくことを危惧している」(東北=一般レストラン)

「令和になって初めての12月ということもあり、きっと忘年会などを楽しむのではないかとみていたが、思っていたほどの客足ではなかった。例年と比べても、客の数が若干少ない」(北海道=スナック)

「例年に比べて暖冬の影響を受けたクリスマス商戦、年末商戦の重衣料の動きが鈍い。ま た、消費税増税の影響がいまだにあることが一因として挙げられる」(南関東=衣料品専門店)

「2~3か月後はいよいよ2020年東京オリンピックということで、その分野に関しては良いと聞いているが、他の教育及び一般団体旅行が伸び悩んでいるようなので、相殺して 変わらない。個人も思わしくないと聞いている」(南関東=旅行代理店)

「法人利用の一般忘年会が、周辺施設も含め、軒並み全て減少している。当ホテルでも、 前年比20%ほど落としてしまっている」(甲信越=都市型ホテル)

「富士五湖周辺では、アジア周辺からの観光客が堅調に推移している。しかし、多くの大手ホテルチェーンの進出により、地元ホテルの宿泊客が大手に流れており、観光客は増加傾向であるものの、景気自体は変わらない」(甲信越=金融業)

「忘年会シーズンは終わったが、今後も、送別会、歓迎会、合格祝い会などの需要がある。 ただ、職場での利用が減少しているため、売上が懸念される。また、アルコールを提供する宴会よりもノンアルコールの食事会が増加する現状があるので、1件当たりの単価が伸びず、前年から売上が変化しない」(中国=一般レストラン)

「消費税増税の影響を明らかに受けた形となっている。住宅展示場の来場者数は減少しており、大手住宅メーカーの契約数が明らかに落ち込んでいる。今後もしばらくはこの傾向は 継続するとみている」(四国=木材木製品製造業)

来年、地方を中心に不景気か

 引用が長くなった。もちろん、この調査自体はあくまでアンケートであり、今後集計されるハードデータとは乖離があるかもしれない。ただ、東京オリンピックの年を迎え、従来から国内経済を底上げしてきた建設需要が地方都市圏ではあらかた出尽くした感がある。さらに、消費増税の影響もさることながら、職場などでの飲み会もハラスメントを恐れる風潮などにより敬遠されるようになり飲食店は苦戦しているのは間違いない。

 地方の「外貨獲得」の頼みの綱であるインバウンド需要も、昨今の新型肺炎の感染拡大で中国人観光客に対するイメージが悪化すれば、徐々に停滞していく懸念もある。実際、日本観光局によると、2019年の韓国人観光客は今年の日韓関係の悪化により、前年比25.9%減の558万4600人となっており、地方の観光業には少なからぬ打撃を与えたことと推測される。

 政府は今年、事業規模26兆円の経済対策を実施する予定だが、「今年はこれだけの規模でやれば経済の急減速は避けられるが、問題は来年。地方を中心に一気に不景気になる恐れがある」(銀行系証券のストラテジスト)との懸念もある。今後の日本経済の動向が注目される。

(文=松岡久蔵/ジャーナリスト)

●松岡 久蔵(まつおか きゅうぞう)
Kyuzo Matsuoka
ジャーナリスト
地方紙勤務を経てフリーに。マスコミの経営問題や雇用、農林水産業など幅広い分野をカバー。特技は相撲の猫じゃらし。現代ビジネスや東洋経済オンラインなどにも寄稿している。ツイッターアカウントは @kyuzo_matsuoka

ホームページはhttp://kyuzo-matsuoka.com/