しかし法律上は、店側は「イートイン用のハンバーガー」と「テイクアウト用のハンバーガー」を販売していることになる。顧客がどこで食べたかは税金面では関係ない。どちらのハンバーガーを注文したかだ。店側が「同じハンバーガーだから、両方合わせて本日は100個売れました」では、税法上許されない。イートイン用50個、テイクアウト用50個というように別々に集計しなければいけない。そして、その数量に応じた税金を支払うことになる。
店側にすると、商品管理上は同じ商品なのに、税金面で違う商品になるので一物二価になる。マクドナルドやケンタッキーフライドチキンのように、イートインとテイクアウトの販売価格が同一の店でも、税金面では異なる商品になるので、この場合も一物二価が生じる。
ただし、こうしたケースがすべて脱税とは言い切れない。意図的でなくてもこうしたことは起こるからだ。例えば、レジ係の打ち間違いだ。会計時に顧客が「イートイン」と意思表示をしたのに、レジでは「テイクアウト」の処理をしたというミスをしたときだ。顧客が間違いを指摘することもあるかもしれないが、支払う金額が少なければ文句を言う人は少ない。
特に、マクドナルドやケンタッキーのように、イートインとテイクアウトの販売価格が同一の時に起こりやすい。というより、顧客の指摘がほとんどないので、レジ係が気づきにくいといったほうが正確かもしれない。
ただ税務上は、実際に100人中何人がイートイン用のハンバーガーを注文したのかを見極めることは困難だ。たとえ税務署の職員が店舗を一日中見ていても、座っている顧客がイートインと宣言したかどうかはわからない。ましてや、レジ係がミスをしたかどうかも判別はできない。意図的な脱税行為という証拠がなければ、法的な処分を下すことはできないだろう。
店側の申告に頼るしかないが、あまりにも極端な場合は行政から指導されるかもしれない。たとえば、多くの顧客が座って食べているのに、税金面ではほとんどの顧客がテイクアウト扱いになっている場合だ。
脱税とは言い切れないが、指導すべきケースが(2)である。ひとつは、イートインスペースがあるのに「イートイン用ハンバーガー」を用意していないケースだ。イートイン設備があるのに、すべてがテイクアウト商品でイートイン商品を一切扱っていないということは許されない。
もうひとつは、顧客にイートインかテイクアウトかの意思確認をしていないケースだ。コンビニのように明らかにテイクアウト客が多い店の場合は、レジに「イートインの場合は会計時に申し出てください」という表示をすれば、店側から意思確認をする必要はないが、筆者が体験したイートインコーナーの店は、とてもそんな店には思えなかった。
この店が、コンビニやスーパーのイートインと決定的に違うのは、「イートイン専用のレジがある」ことだ。さらに、コンビニなどと違って簡単ながらも「その場で店側が調理している」ことだ。その店はファストフード店だったが、店側からレジ係に対して、きちんと客にイートインかテイクアウトかを意思確認するよう指示があれば、すべての客に確認するだろう。そして、客はもしレジ係から確認されれば、正しく申告するだろう。
増税が始まって3カ月以上が経過している。税務署がこの店の状況を確認すれば、実際にイートイン客がどのくらいいたのかはわかるはずだ。もし、ほぼすべての客がテイクアウト客だったとしたら、税務署は注意すべきだろう。
(文=垣田達哉/消費者問題研究所代表)