インスタ「いいね」数、非表示化で“競わない”が好評…インフルエンサービジネスが岐路

 一般のユーザーにとっては好意的に受け止められているという「いいね」数の非表示化だが、一方で気になるのは「いいね」を商売として利用するインフルエンサービジネスの動向だ。

「やはり『いいね』数を多く獲得することが常態化し、そのことを武器としていたインフルエンサーや、『いいね』数を稼ぐこと自体に楽しみを感じていた依存傾向にあるユーザーからは、今回のテストは歓迎されていません。

 まだテスト段階なので、インフルエンサービジネスが変化を始めたといったことは起きていないようです。あるインフルエンサーを扱うマーケティング会社からは、別の指標があるので問題ないとも聞いています。しかし、インスタのCEOがインフルエンサーに新たな収益源を提供したいと発言しているので、例えばインスタから商品をダイレクトに購入できるようになり、その購入率が『いいね』数の代わりの指標となるような、新たなビジネスが生まれる可能性はあるでしょう。インフルエンサーの存在によって、インスタの利用時間やユーザーが増加したことは間違いありませんから、彼らに今とは違うかたちで還元したいという思いがあるようですね」(高橋氏)

「いいね」数の非表示化によって、「いいね」の数をユーザー同士が競い合うことがなくなり、「いいね」数を武器としていたインフルエンサーにも新たなビジネスモデルが提供されることとなれば、SNSは現在の状況から大きく様変わりすることになりそうだ。

「『いいね』の数が見えてしまうと、どうしても周りの人と数字を比較して、なんで自分はこんなに少ないんだろう、といった不安な気持ちが生まれてしまうもの。ですが、『いいね』をもらえたことで嬉しい気持ちになる、写真が素敵だから気軽に『いいね』をするというのは、当然ながら悪いことではないと思うのです。

 実際に、前述の調査で利用者からは自分の感覚のままに、ほかのユーザーの目を気にせずに『いいね』機能を使えるようになったという声が上がっているので、SNSが当初目指していた『いいね』のあり方へと、今回の非表示化テストによって軌道修正されているのではないでしょうか。

 ユーザーからの評判がよく、テストの範囲を次第に拡大していっていますので、まだテスト段階とはなっていますが、このまま実装につながる可能性は高いと思います」(同)

 利用状況の健全化を意図して実施された「いいね」数の非表示化テストは、確実に成果を出しているようだ。いじめやフェイクニュースなど、いまだに多くの問題をはらんでいるSNSだが、承認欲求の加速にはようやく歯止めがかかるのではないだろうか。

(文=佐久間翔大/A4studio)