ホンダと日産、電撃浮上した「経営統合」の現実味

日産の社長最有力候補だった関潤氏。日本電産(現ニデック)を経て、ホンハイでEV事業のCSOを務める(編集部撮影)

今年9月、関氏は日本で、久々に公の場に姿を現した。ホンハイ子会社のシャープの技術展示イベントに登壇し、「(ニデックでの経験を念頭に)高地トレーニングで鍛えられた」と語り、会場の笑いを誘った。この日は子会社のシャープがホンハイのEV車台(プラットフォーム)を活用したEVのコンセプトモデルをお披露目。関氏は意気揚々とホンハイのEV事業の戦略を語っていた。

EV熱は冷めつつあっても日産の割安感が勝る

だが、関係者によればホンハイのEV事業は必ずしも芳しい状況ではなかったようだ。複数のアメリカの新興EVベンチャーに出資していたが、昨年から今年にかけて2社が破産申請。受託生産の顧客も広がっていない。

世界的にEV販売が失速する一方、AIサーバーの製造が拡大しホンハイの業績は絶好調で、EV熱は冷めつつあったという。ただ、業績が悪化した日産の株価が大きく下がったことで、製造設備や販売網を格安で手に入れるチャンスと捉えたとみられる。

日産にとってホンハイの出資は好ましい提案ではなかったようだ。ホンダ側もホンハイの日産出資の動きを察知。これを阻止するために急展開での経営統合の協議に発展したというわけだ。

もっとも、18日夜に「ホンハイの影響」について問われたホンダの三部社長は、「まったく関係ない。そんなものでこんな大きな話はしない」「そうした事実があるのかないのかもまだわかっていない」と歯切れ悪く否定した。

日産は大幅高、ホンダは下落

いずれにしても、日産とホンダの経営統合の議論がすんなり進むとは限らない。確かに調達面や電動化投資で規模の経済は生まれるが、両社は販売地域の重なりが大きく、統合メリットは限定的とも言える。

持ち株会社という対等な関係を念頭に交渉を性急に進めた場合、主導権争いが起きる懸念もある。何より、日産の立て直しが進まなければ、ホンダも大きな痛手を負いかねない。

経営統合が報じられた12月18日、日産の株価(終値)は前日比23.7%の大幅高となったが、ホンダは同3%安と下げた。今回の統合協議は、経営が悪化する日産の救済にはなるが、ホンダにとってのメリットは薄いと市場は判断したとも言える。

日産の改革が進まなければ、火事場の再編劇も幻に終わりかねない。

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