昨年(2024年版)に至っては、ベスト3のうち[オトコ編]2位の荒川弘『黄泉のツガイ』以外、ほぼ新人の初単行本で、[オトコ編]3位の坂上暁仁『神田ごくら町職人ばなし』、[オンナ編]1位の大白小蟹『うみべのストーブ 大白小蟹短編集』はいずれも単巻もののマニアックな作品だ。
『このマンガがすごい!』のアンケートには筆者も初回からずっと参加しているが、年間1万点を超えるマンガの中から5作を選ぶのは容易ではない。個人的には毎年何らかのテーマを設けており、今年は[オトコ編]で「バディもの」の5作を選んだ。ほかのアンケート参加者も、誰もが知る人気作はあえて避けて、自分だけの“推し作品”に投票する傾向が強まっているのではないか。そうでなければ、今年9月に完結したメガヒット作『呪術廻戦』(芥見下々)がベストテンに入っていないことの説明がつかない。
また、紙の雑誌ではなくウェブ媒体の掲載作が増えるにつれ、男性向け、女性向けとはっきり分けられないジェンダーレスな作品が増えていることもあり、2023年版からは[オトコ編][オンナ編]の区分けも見直され、より時代に対応したものとなった。
こうしたマンガランキング本の存在意義は、順位そのものよりも、知らなかった作品と出会う機会を提供することにある。そういう意味では、必ずしもメジャーではない作品、埋もれてしまいがちな単巻ものや短編集にスポットが当たる現在の状況は、むしろ健全と言えるだろう。ベストテン作品は、いずれもハズレなく面白い。ランキング全体は誌面でご確認いただくとして、気になる作品があったら、ぜひ手に取ってみてほしい。