――日本美容外科学会(JSAPS)らが実施した美容医療実態調査によると、美容外科の施術回数は2022年が373万回。コロナ禍でいったん減りましたが、以降増えているようです。特に今の若い人たちは昔に比べ、美容医療に対するハードルが下がっている感じがします。
美容医療界も、若者の美容意識も、ここ10年で大きく変わりました。若者ほど美容医療に抵抗がなく、10代~20代の若い女性の6~7割が美容医療に肯定的です。
2022年に調査会社が実施した「美容に関する意識調査」(株式会社クロス・マーケティングが実施した美容に関する調査(2022年)女性編)でも、10代(15~19歳)では74%、20代は57%が「コンプレックスをなくすために、美容整形することは良いと思う」と回答しています。
影響を与えたのは、スマートフォンの普及とSNSですね。
若い人たちはスマホに内蔵された高解像度のカメラで自撮りした写真をアプリで加工し、それを日常的にインスタグラムやTikTokなどのSNSにアップしています。こうした環境下では、見た目を重視する傾向が強まりやすい。
ちょっと前までは「浜崎あゆみにしてほしい」とか「安室奈美恵にしてほしい」といった要望が多かったですが、最近は、アプリで加工した自分の顔の写真を見せて、「この顔に近づきたい」と要望する人が増えました。
自分の顔を高解像度でじっくり見て、もっとよくしたいパーツを見つけてしまう。そのときに、まったく異なる誰かの顔を目指すのでなく、アプリ加工でより最適化された自分を目指す傾向があります。
――韓流ブームから始まったのか、美容大国として知られる韓国の影響もありますよね。
とても大きいですね。韓国のタレントが美容医療で変貌した写真などが出まわったりして、韓国の美容医療のトレンドが日本の若者の美容意識にもすごく影響しています。日本にいる一部の整形ヘビーユーザーだけでなく、若い子のなかにも、韓国で整形手術を受けてくる人が増えています。
韓国の美容医療は、技術レベル的には日本とほとんど変わらないのですが、競争が厳しいので、費用が比較的安い。一方で、劇的な結果を求められるあまり、日本ではやらないような大胆でハイリスクな施術をする施設も増えています。たとえば鼻の整形で、ビュンと鼻先を出す手術などですね。
海外ゆえに、仕上がりに不満足だったケースや合併症が起きた場合のアフターケアを受けにくいこともあって、トラブルも増えています。
――日本では一般的に、どんな理由で美容外科に来院してくるのでしょうか。
大きく2つのタイプにわかれるかと思います。
1つは美容医療を経験している人の場合で、受診する前に施術の内容や医師の経歴、料金体系までネットで徹底的に調べ尽くしてから来院する傾向があります。
さらに、SNSや口コミサイトでの評判、症例写真やほかの患者さんの体験談、YouTubeで手術の流れや術後の経過まで確認したうえで、「このドクターにこの施術をお願いしたい」と明確に決めてくる人が多いですね。