ネットフリックスやアマゾンプライムでも、バラエティ番組は会員獲得の原動力となっただけに、その効果が注目される。製作は日本テレビで、今後同社との協業がどこまで広がるかもポイントだ。
ディズニーのAPACプレジデント、ルーク・カン氏は、アジア発の独自作品に本格参入した3年間を「ディズニーがこれほど多くのアジア発コンテンツを手掛けたことはなく、一歩一歩、本当に小さなステップを踏んできた」と振り返る。
そのうえで「ディズニーは長期的にこの地域で独自作品を作っていく。今回のラインナップを見れば、それを実感してもらえるはずだ」と語る。
2019年11月の参入以来、苦戦が続いたディズニーの動画配信事業だが、ここにきて光明が見え始めた。11月14日に発表された2024年度決算では、動画配信事業が通期ベースで初めて黒字に転換。当日の株価は、前日終値と比べ一時10%超上昇した。
黒字転換には、傘下の別の動画配信サービス「Hulu」とのバンドル(組み合わせ)販売や広告収入の増加、コスト削減など複数の要因がある。ただ、今後も市場から動画配信の収益性が厳しく問われるのは間違いない。
収益性を重視する姿勢は発表会にも表れていた。前回の発表会ではアジア各国で制作された作品が紹介されたが、今回は日韓の独自作品に絞った。投資の「選択と集中」をした結果といえるかもしれない。
黒字化したとはいえ、9月末のディズニープラスの会員数は1億5860万人にとどまる。2億8272万人のネットフリックスの背中は遠い。
ネットフリックスの会員数を地域別に見ると、アジア地域は5260万人だが、1年間の伸び率は約24%増と、最も伸びたエリアだった。ディズニーの動画配信事業にとっても、アジアでの成長は欠かせない。
「オーセンティシティ」。今回の発表で、ディズニー幹部からこの言葉をよく聞いた。「本物志向」と訳されることの多いこの言葉は、ディズニー社内では『SHOGUN 将軍』を表現するときによく使われている。
同作品はアメリカの制作ながら、日本人のキャストが中心で、セリフの7割が日本語だった。公表されていないが、1話あたりの制作費はハリウッドで制作されるドラマよりも高額だったといわれている。
ルーク氏はアジアにおける日韓コンテンツの制作を「リスクをとって進める」と語る。ディズニーから本物志向の作品がどれだけ増えるのか。そして、それがどれだけの会員増につながるのか。今後、ディズニーの真の実力が問われそうだ。