「ゆるい働き方」に不安を感じる若手社員の本心

小さなステップを刻んでいく

こうした不安や焦りを少しでも解消し、今の時代にあった働きかたを模索する新しい「働きかたのデザイン」について、私はさまざまな角度から体系的な提案をしています。ここでは、すぐにあなたの行動や意識を変えてくれそうなアイデアを1つ紹介したいと思います。

それは、スモールステップ理論というものです。私は、キャリア形成において、マインドセットや認識よりも「行動」や「経験」が重要だと考えています。アクションがリアクションを生み出し、またアクションにつながります。この循環を広げることがキャリアデザインにおいて重要な要素だと考えます。

また、「行動」は1つに分類可能です。1つは、“大きな行動”と言えるもの。つまり、転職の際の職務経歴書に記載することができたり、SNSで自慢できたりするような行動です。

こうした行動は、もちろんその後のキャリア形成につながり、その後の働きかたを豊かにしていくでしょう。しかし、こうした大きな行動には、「簡単にはできない」という単純ですが大きな問題があります。

では、現在“大きな行動”ができている若手社会人は、過去にどんなことをしていたのかと調査・研究してみたときに注目したのが、もう1つの「行動」、つまり“小さな行動(スモールステップ)”だったのです。

(図:大和書房提供)

スモールステップは、ひと言で言うと「職務経歴書やSNSのプロフィール欄に書くことができるような可視の経験ではない、誰でもいつでもできる軽易な行動」のことです。分析の結果、1つひとつは目立たないスモールステップが助走のようになって、経歴書に書ける“大きな行動”につながっていることがわかりました。

スモールステップにはどんなものがあるのか、調査の項目から例として挙げてみます。

「やりたいことをみんなに話してみる」:自分の挑戦したいこと、思っていることを知人・友人に開示する
「初対面の人とも積極的に会う」:自分が日々接している人々ではない人と交流する
「友達に誘われたイベント等に行く」:自発的に行うことではなく、他者の誘いの機会を利用する
「LINEやメッセンジャーなどで目的に合わせたグループを作る」:今すぐにできることを厭わずやってみる
 

こうしたほんの小さな行動の積み重ねが、大きな行動につながっていることがわかっているのです。ここで、スモールステップを5つの類型に整理して紹介していきたいと思います。

①自分のやりたいことをアウトプットしてみる
(自己開示/Disclosure)

自分のやりたいことを人に話すことやSNSを用いて発信することは、とても簡単そうにみえて実は多くの人が行っていない行動です。調査によれば、SNSの利用法として、「新しく取り組みたいことの発信」を積極的に行っている若手は、仕事上・業務外ともに全体の20%前後に留まっていました。

自身のやりたいことを他者に対してオープンにすることで、いろいろなきっかけを生み出す。発信することで、周囲を巻き込む。「なんとなく意識高い系に見られそうで、恥ずかしい」と思ってしまう心境があるからこそ、実際には多くの人がやっていない、小さいが確実に効果がある最初のステップと位置づけられます。

②背中を押してもらい、パワーをもらう
(エネルギーを受け取る/Encouragement)

さまざまな情報があふれる社会ですし、何か新しいことをする際には「コスパが悪いのではないか」「みんなやっていないし、無意味なのではないか」といった心境がどうしても付きまといます。こうした不安を振り切るためのエネルギーをどう調達するのかが重要になります。