いまや多くの企業に変革が求められる時代です。みなさんが担当している業務においても、ドラスティックな改革やカイゼンを求められることが多くなっているかもしれません。
こうしたお話をするときに、いつも私が思い起こすのが、トヨタグループでの「原価半減プロジェクト」です。私がトヨタグループで働いていたとき、担当する自動車部品の製造原価を「現状の半分に引き下げる」プロジェクトに取り組んだことがありました。
過去、先人たちも必死に原価管理に取り組んできた製品に対して、そこからさらに半減を目指すなんて「絶対に無理!」と思ったものです。
仕事をしていると、こうした一見、無理難題と思える事案をクリアしなくてはならないことがあります。そんなとき、従来型の改革やカイゼンの考え方ではとうてい太刀打ちできません。
従来の発想の延長線上で考えていては、壁にぶつかり、どうしても行き詰まってしまう、ブレイクスルーをどう引き起こせばいいのか……。そんなときに実践していただきたい2つのステップを説明します。
みなさんが働いている職場でも、これまでを振り返ると、絶対無理と思えるような条件の中で仕事をこなさなければならないときはあったはずです。納期がタイトすぎる、マンパワーに対して仕事量が膨大、まともに考えていてはどうにも打開策やアイディアが思い浮かばない……。
そんなときは、あえて無茶苦茶な制約条件を設定して、従来にない発想を引き出してみます。
思い返してみると、トヨタグループの「原価半減プロジェクト」は、「極端な制約条件」が設定されたケースでした。担当者たちは不可能と思われた制約条件があったからこそ、最終的に原価半減に成功したともいえます。
つまり、極端な制約条件とは見方を変えれば、ブレイクスルーを引き起こして成功に導く「成功の条件」でもあるのです。
トヨタは創業時からアメリカとの技術格差、新たな法規制、為替変動など、厳しく絶望的とも思えるような制約条件のなかで革新を生んできました。そうした経験があればこそといえるのですが、ときにわざと極端な制約条件を設定して、意図的に革新を生み出そうとします。
それが、「原価半減プロジェクト」だったといえるかもしれせん。
ところで、どうやって自動車部品の原価を半減したのでしょうか。ボーッと自動車部品を眺めているだけでは、原価を半分にする方法は見えてきません。そこで、その自動車部品の構造を細分化し、それぞれの部品ごとに製造原価を引き下げられないかを確認していきました。
機械部品であれば分解して、さらに構成部品レベルに落とし込んで、徹底的に何にいくらかかっているかを把握したのです。
そのうえで、「どうしたらカイゼンできるか?」を必死に議論しました。他業界の工夫や日常生活でのヒントはないかもよく考えました。