社員同士が「友だち」でもある会社の業績が良い訳

オフィスで談笑する2人の男性
職場に親友がいる人は生産性が高く、企業の業績も好調であることが知られています(写真:マハロ/PIXTA)
友だちの数、生産性の高いチームのメンバー数、縦割り化する会社の社員数……。これらの人数は、進化心理学者のロビン・ダンバーが発見した「ダンバー数」や「ダンバー・グラフ」に支配されている。古来より人類は、「家族」や「部族(トライブ)」を形作って暮らしてきたからだ。
 
メンバー同士が絆を深め、信頼し合い、帰属意識をもって協力し合う、創造的で生産性の高い組織を築くためには、このような人間の本能や行動様式にかんする科学的な知識が不可欠である。今回、『「組織と人数」の絶対法則』より、一部抜粋、編集のうえ、お届けする。
 

職場の友人関係が業績を左右する

「組織と人数」の絶対法則: 人間関係を支配する「ダンバー数」のすごい力
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もう30年にわたって、調査会社のギャラップは人と人、人と企業などの関係の深さを意味するエンゲージメントにかかわる調査をしている。彼らが使うアンケートには次の設問が含まれている。「あなたは職場に親友がいますか?」。

ギャラップがこの設問をアンケートに入れるのは、同社の経験によれば、戻ってくる回答が明らかに企業の業績と関連しているからだ。

「はい」と答えた女性の63%が職場で「社員どうしや社員と会社との絆の深さ」を感じるという。これに対して、「いいえ」と答えた人の場合はわずか23%だ。

多様で、生産性が高く、信頼できる従業員を抱えたい企業なら、職場における社会的側面に目を向け、測定の難しい思わぬ発見や幸運(セレンディピティ)を呼び込むような行動を見逃さないように努力すべきだ。

職場における強力な人間関係はさまざまな理由から重要である。マイクロソフトのワーク・トレンド・インデックス年次報告書は、職場の社会的ネットワークが充実していると、生産性の向上とイノベーションという恩恵があると強調する。

曰く、「生産性にかんして言えば、自分は生産性が高いと感じる人は、そうでない人より職場における人間関係が充実していると答えた。また、普段通りの仕事日に職場に自分の居場所があると感じるという。

これに反して、今年になって同僚との交流が減ったと答えた人は、イノベーションにつながるような事柄にあまり成功していないという。これらの人々は戦略的な思考、同僚との協力やブレインストーミング、斬新なアイデアの提案などにかかわっていないのだ」。

職場で友情が生まれるようにする

リーダーシップと成人期能力開発の専門家ジェニファー・ガーベイ・バーガーは、職場に友人がいることの大切さを痛感した。

そこで自身のコーチング・リーダーシップ開発組織全体に「グロース・グループ」を設立し、時間的にも空間的にも弾性のある「横の関係」〔訳注 上司と部下のような縦の関係ではなく友人どうしのような対等な関係〕をもたらそうと試みた。

「友情は自然に生まれるものではありません。それは意図があってこそ生まれるのです」と彼女は言う。彼女は一連の「一見無意味にしか思えない」組織の慣行を取り決めた。つまり、「人々が出会って互いの声を聞くことができるスペースをつくるために」、彼女のチームは意図していない会話を生み出すことを意図するのだ。

彼らは異なるタイプの会話のために異なるチャンネルをつくった。「もう気分は最低」のチャンネルまである。

彼女は組織内の人間関係がどのようにして自然に分裂するかをつねに観察し、分かれた部分どうしを横断する構造をつくって友人関係が芽生える可能性を高めようとした。この方法によって自身の組織内の信頼と責任(コミットメント)が強化されると彼女は信じている。