これは何も、質問力やプールの監視員に限った話ではなく、プロフェッショナルのスキル、すべてにいえることです。技術だけが頭の中にあっても、行動として現れなければないに等しいですし、自信だけしかなければ、行動することができたとしても闇雲に動いているだけになります。
つまり質問力が身につくとは、スキルと自信の2つをもっているということです。
「質問力は、誰でも身につけられるでしょうか?」。ときどき、このような質問をされることがあります。結論を述べると、質問力は誰でも身につけられるものです。ただし、なかには身につけるのに時間がかかる人もいます。
たとえば、先生や両親が質問を受けつけないような環境で育った子どもが当てはまります。「従順であることが当たり前」だと感じていたり、遠慮しすぎたりする人には、質問力が身につくにしても時間がかかる恐れがあります。
質問することに慣れていないだけということもあります。つまり、どのような人であれ、慣れれば誰でも質問力を手に入れることができます。
では、この質問力はどのように向上していけばよいのでしょうか。その質問力向上のカギは、工夫とチャレンジです。
質問することが苦手な人は少し前向きになって、友だちや家族に質問を投げかける回数を増やしたり、初対面の人が集まる場所に足を運んだりしてください。質問はコミュニケーションの一つですので、多少の苦手意識があっても、失敗を臆することはありません。失敗しても次の工夫につながります。
質問力を身につけるうえでもう一つ大切なことは、自分自身に質問をするセルフトークです。セルフトークとは、自分の中で自分自身に質問をすることで、答えを導き出したり、漠然とした悩みを正確な悩みとして変換したりすることができます。
そして、このセルフトークをするタイミングとして特におすすめしたいのが、ネガティブな気持ちに支配されてしまったときです。「もう自分はダメだ」という自分の声に対して、「今はピンチだけど、どこかに可能性やメリットはないか?」「転んでもただでは起きないためには何ができるか?」などと前向きに問いかけるのです。
こういった質問は、「レジリエンス」に有効です。レジリエンスとは逆境や困難に立ち向かい、物事をポジティブにとらえるための心理的リソースです。質問の形だけでなく、自分自身への呼びかけや説得もレジリエンスに有効です。
負けん気が強い人でしたら、「もう自分はダメなのか?いやそんなことはない」といった言葉で自分を鼓舞するのもいいでしょう。ネガティブな言葉に対して、自分を鼓舞することで、前向きになれることが研究でわかっています。
繊細な人の場合は、「今はちょっと休憩して、またがんばろう」といった言葉をかけて、自分自身にそっと寄り添ってあげるのもいいと思います。
このように自分の性格をよく把握して、自分のタイプに応じて自分への質問、投げかける言葉を変えていくことが大切です。
少しでも悩んだり、気になったことがあったりしたら、自分に質問や言葉がけをしていくことで、行動や思考が次第に変化していきます。「現在」の自分とちゃんと向き合うことで、少しずつ未来が変化していくのです。
それと同時に、他者への質問力も向上していくので一石二鳥といえます。
ここで、心理学に基づいて作成した「セルフトーク」のチェックをしてみましょう。この尺度は、あなたのセルフトークスキルを10項目で評価します。各項目について、5段階評価で回答してください。
【合計点が24点以下】
セルフトークスキルが低めと考えられます。自分自身への否定的なイメージが強く、課題解決にセルフトークを活用できていない可能性があります。まず、ネガティブなセルフトークを前向きなセルフトークへ変換する意識をもちましょう。
【合計点が25~34点】
セルフトークスキルは平均程度です。自分自身への肯定的なイメージをもちはじめていますが、課題解決にセルフトークを十分に活用できていない可能性があります。
【合計点が35点以上】
セルフトークスキルが高いと考えられます。自分自身への肯定的なイメージをもち、課題解決にセルフトークを効果的に活用できています。
結果において、低いと感じたところは、成長するための伸びしろと考えましょう。自分自身が低めととらえているだけかもしれませんので、成長するためのヒントになります。できるだけ、前向きに考えながら成長へとつなげていくのです。