「部長、その話、キツいっす」部下が辞める雑談2種

この会社では、コンサルティングといっても、実際の仕事は定型のフォーマットを使って同じ作業を繰り返すだけであり、K氏はコンサルタントとして大きな成長を実感することはありませんでした。

ただ、給料がいいので辞めるつもりはなく、給料のためだけに働く状況でした。

K氏は部下と飲みに行った際、「この会社で10年以上働いているが、大きく成長できるような仕事を任せてもらったことがない」といった愚痴をよくこぼしていました。

ある日、部下の1人から転職するとの申し出があります。

理由を尋ねると、「Kさんの話を聞いていて、この会社で長く働いても、自分は成長できないと感じました」とのこと。

この話を聞いてK氏は、普段自分が言っている会社への愚痴が部下のキャリアに対する不安を引き起こしていたことに気づきます。

K氏は「会社の愚痴って、居酒屋で話す定番のネタじゃないですか。だから当たり前のように話してましたけど、それがいけなかったですね。優秀な部下を失って、結果として自分で自分の首を絞めることになってしまいました」

部下の「会社に対する信頼」を失わせる愚痴

また、あるベンチャー企業でマネージャーを務めていたN氏の話です。

その会社は社長と役員の仲が悪く、N氏は役員の直属の部下で、役員の指示に従って仕事をしていたところ、社長に「何を勝手なことをやってんだ! そうじゃなくて、こうやれ!」と叱られることが何度かあり、社長との関係は決して良い状況にはありませんでした。

N氏はその状況を部下に話し、「社長と役員の不仲のせいで自分まで社長から嫌われている。経営陣の不仲が現場に悪影響をおよぼしている、うちの会社は相当やばいよ」といった愚痴を頻繁にこぼしていました。

その場では部下も「それはひどいっすね」と同調してくれましたが、その後、その部下が退職します。

理由を聞いたところ、「Nさんからこの会社相当やばいって聞いてから、なんか会社のイメージが悪くなって。で、転職サイトに登録したらいいところが見つかったので転職しようと思います」とのことでした。

このように、上司の会社に対する愚痴は部下の会社に対する信頼を失わせ、大きな不安を与えます。

それが退職のきっかけになることは少なくありません。

自分で自分の首を絞めないためにも

日々の忙しさや会社への愚痴は、部下との話のネタの定番といえるようなものです。

また、人間には、何か強い感情を味わうと他者に話して共感してもらいたくなる、「共感欲求」という非常に強い欲求があります。

この点、「残業や休日出勤をして大変な思いをした」「会社に対して怒りや不満を感じる」といったことは強い感情を伴うものであり、それゆえに共感欲求を満たそうと他者に話して共感を求めたくなるものです。

だからこそ、話のネタにしやすいのです。

しかし、そのコミュニケーションが部下の心理にネガティブな影響を与える可能性は高く、それが離職のきっかけとなることもあります。

そして、それが原因で部下が辞めた場合、その部下の仕事を代わりにやるのは上司本人だったりします。

それは自分で自分の首を絞めることになります。

そのため、こういった話は話のネタにしたくなりやすいものではありますが、部下に与える心理的影響も忘れないようにしていただければと思います。