「あ、昇進するなら辞めます」若者の新常識のなぜ

また、自分の上司が残業や休日出勤をしている状況を目の当たりにすると「昇進すると残業や休日出勤をさせられることになる」という意識は強くなるでしょう。

もちろん残業してでもバリバリ働きたいという若手もいます。ただ、そういう若手は決して多数派とはいえないでしょう。

②人間関係にストレスを感じやすい

上記の「仕事でストレスを感じるのはどんなときですか?」の質問の回答として多いのが「人間関係」「上司やお客様から叱られると辞めたくなる」といった答えです。

今の若手世代は一昔前と比べて親や先生から叱られることが減っており、特に学校の先生は強く叱るとパワハラだと言われ、SNSで拡散されるおそれもあり、叱ることが難しい状況です。

また、少子化で兄弟も少なくなっており、兄弟げんかで強い感情をぶつける、あるいはぶつけられるといった機会も少なくなっています。

そういった叱られることや強い感情への耐性がないまま社会人になり、上司やお客様から叱られると心が折れそうになる人は少なくありません。

そのため、「わずらわしい人間関係は避けたい」という傾向は顕著だといえます。

しかし、昇進すると職場の管理を任され、部下を指導し、時には叱らないといけなくなる。叱ると反発されることもある。社内の責任も重くなり、上司のあたりもきつくなる。

そんな状況は、たまったものじゃないわけです。

そもそも「物欲、出世欲」が少ない

③物欲、出世欲が強くない

この世代の人からは「いい車に乗りたい」「いい家に住みたい」「高い時計が欲しい」といった言葉はそれほど多く聞かれません。

一方で、「いい物を買うために残業してまで稼ぎたいかというと、そういうわけでもない。だったらそこそこの物でいい」という話は多く聞かれます。

また、インターネットで情報収集することに長けており、お金をかけなくても欲しいものを手に入れる術をよく知っています。

そういった点からも多額のお金を必要としないということもあるでしょう。

また、一昔前は「出世=成功」「仕事を通じて自己実現をしていく」という価値観が主流だったように思います。

しかし、今の若手世代は必ずしもそうではなく、「出世より仕事よりプライベートを大事にしたい」といった声がよく聞かれます。

こういったことからも自己実現は仕事を通じてではなく、プライベートを充実させることで行っていきたいという価値観を感じます。

これらのことを考えると、「昇進すると忙しくなるから残業や休日出勤も増えるだろうし、人間関係のストレスも増える。そんなのは絶対に嫌だ。給料はそこそこでいいし、偉くなりたいわけでもない。だから昇進なんかしたくない」というのが、昇進が原因で辞める人の本音だといえるでしょう。

実際、その理由で辞めた31歳の男性はこう話されていました。

「上司のマネージャーを見てると、毎日残業してるし、土日もたまに出社してるし、上からの圧力もきつくなるし、自分には無理だと思いました。自分は給料が上がるより定時で帰れるほうがありがたいです。なので、マネージャー昇格の話が出たタイミングで辞めました」

こういった若手社員の心理からすれば、「昇進は名誉なこと。きっと本人も喜ぶだろう」と考え、本人の意向も十分に確認せずに若手社員を昇進させようとすると、離職されかねないわけです。

そのため、昇進させるかどうかを判断する際は本人の意向をよく聞いたうえで慎重に対応することが重要です。

昇進に応じてもらうためのコミュニケーションと関わり

とはいえ、ある程度の年次になったら、昇進してチームを取りまとめてもらわないと困る場合もあります。

その場合、昇進前の段階から昇進後の業務を少しずつ経験してもらい、自信をつけてもらうと、スムーズに昇進してもらいやすくなります。

また、昇進を拒む場合はその理由を把握し、その理由に応じて次のことを伝えることができれば昇進に応じてもらいやすくなります。

・業務量が多すぎる場合、サブリーダーを設けて業務を分担してもらうこともできる
・昇進後、上司が相談役として関わるので相談したいことは遠慮なく相談していい
・責任を1人で抱え込もうとせず、上司と連携して一緒に進めていこう
・昇進後、どうしても耐えられないようなら、また元のポジションに戻すこともできる

 

そして、昇進後は実際にこれらのフォローを行い、業務の経験を重ねてもらうと、残業しなくても業務をこなせる体制を作ったり、人間関係のストレスの耐性がついたりすることで、昇進後の業務もこなせるようになっていきます。

「昇進したくなかったです。だから辞めます」

そういった離職を防ぐために、まずは相手の考え方を理解し、その考え方に沿ったキャリアアップの支援をしていただければと思います。

そのうえで本記事が参考になれば幸いです。