「仕事がよくできる若手の部下がいたんです。勤務態度も真面目で、よく頑張ってくれているので彼を現場のリーダーに昇進させたんです。そしたら辞めたいと言ってきたので、慌てて理由を聞いたら、『昇進したくなかったです』と言われ、そのまま辞めていきました。せっかく給料も上がったのに、わけがわかりません」
私は経営心理士、公認会計士として、心理と数字の両面から経営指導を行っていますが、近年、こういう声がよく聞かれます。
私が20代のころは、昇進は1つの大きな目標であり、その目標の存在が高いモチベーションとなって必死で働いていました。
しかし、今は昇進が原因で離職が多発する。時代はずいぶん変わったと感じますが、ただ、彼らの心理的特徴を考えると、その離職はうなずけるものであったりします。
私は20代~30代前半くらいの人と接点を持った際は、よくこんな質問します。
「職場に特に求めるものは何ですか?」
「仕事でストレスを感じるのはどんなときですか?」
「昇給、昇進のためなら、残業や休日出勤もありですか?」
この質問の回答から明確になってきた若手社員の心理的傾向として、次の3つが挙げられます。
これらの点について、詳しくお伝えしていきたいと思います。
20代~30代前半の人に上記の質問をすると、「職場に求めることは残業がないこと」「残業や休日出勤をしてまで稼ぎたいとは思わない」「給料や昇進はそこそこでいいから、プライベートの時間を確保したい」といった話がよく聞かれます。
厚生労働省の令和4年雇用動向調査結果における「転職入職者が前職を辞めた理由」で「労働時間、休日等の労働条件が悪かった」の理由で離職した人の割合を見ると、若い世代ほど労働時間に対する不満が原因で離職するケースが多いことがわかります。
また、女性の30代、40代も数字が高くなっていますが、これは育児や家事、介護などがあるため、時間の融通が利く会社で働きたいというニーズの表れです。
このデータからも、若手世代が残業や休日出勤を嫌うことが見てとれます。
この点、昇進すればプレイヤー業務に加えて、部下の管理、育成といったマネジメント業務も任せられることになり、残業や休日出勤も必要になる可能性が高まります。