最もその人物を知る手がかりを得られるのは、やはり面接の時間だ。手の内を明かすことになるので、質問の中身は言えないのだが、私自身、パワハラ人材を見抜くための「キラー質問」を用意している。
その質問をすると、ほぼ全員が驚いたり、困惑したりする表情をするので、応募者にとってはかなり想定外の内容なのだと思う。
私がそこで注目しているのは、答えの中身というより、質問に対する“答え方”だ。
返答に時間がかかってもいいので、「自分自身を冷静に客観視した答えができているか?」「しっかりと自分の言葉で誠実に語っているか?」を注視している。答えをあやふやにしてごまかしたり、変に流暢だったりするのは疑わしいと見ている。
また、掘り下げる質問や予想外の質問を投げかけたときに、眼光鋭くなったり、顔色がピキっと変わったりする人もいるので、そうした一瞬の表情の変化も見逃さないようにしている。少しイラついたように「いや、ですから」「先ほども言いましたけど」などと、強い口調になるのも要注意だ。
面接中や面接後のやり取りのメールで、何度も細かく待遇などの条件について確認する人もあまり好感は持てない。
条件面について事前に確認するのは大事なことなのだが、あまりに度を越えた質問の多さや細かさがあると、執拗さを感じてしまう。入社後も部下や周りの社員にしつこく問い詰めるのではないかと容易に想像できるため、こうした人物も不採用候補になる。
最近はオンライン面接も増えたが、やはり対面での面接のほうが応募者の人柄を知るうえでメリットが大きいのは確かだ。
それは、面接中のみならず、“面接以外の場”での態度も見られるからだ。たとえば、応接室に通される前の受付での対応や、応接室で社員からお茶を出されたときの態度……。そうした面接以外のシーンで、応募者がどういう態度や言動をとったか、受付やお茶を出してくれたスタッフにヒアリングすることもある。
とくに40~50代の男性に多いのだが、面接ではソフトで人当たりもいいのに、それ以外の場での態度が横柄な人も一定数いる。おそらく、受付やお茶を出してくれたスタッフを“自分よりも下の立場”だと思って、高圧的な態度になっているのだろう。面接前の気を抜いている時間だからこそ、本性が出やすい。
そういう人は、入社後も部下や立場が弱い人たちを軽視し、パワハラする恐れがあるため、不採用候補になる。
ちなみに、私がかつて勤めていた会社の事務職の女性は、応募者の受付対応やお茶出しをしてくれていたが、「私への態度で、応募者が採用されるか、不採用になるかが一瞬でわかるようになった」と言っていた。
つまり、自身への態度がぶっきらぼうだったり、横柄だったりすると、「この人は間違いなく選考で落ちるな……」と、確信していたということだ。
選考は、面接官だけでするわけじゃない。ときに他のスタッフも目を光らせる、“総力戦”で当たることもある。
一方、面接以外でその人物を知る手段として、「リファレンスチェック」というものもある。これは、応募者の職務経歴や実績に虚偽がないかどうか、本人の同意を得たうえで前職の上司や同僚、部下などに確認できる仕組みだが、このリファレンスチェックの内容も大いに参考になる。
それは、応募者のマネジメントの仕方や部下へのコミュニケーションの取り方など、前職の関係者へのインタビューによって、詳細に把握できるからだ。
たとえば、「〇〇さんは強いリーダーシップで部下を叱咤激励することも多い」とか、「やや神経質なタイプで、部下の進捗状況を細かく尋ねることもある」などのコメントがあった場合は、パワハラ気質がまったくないとも言い切れない。