米ディズニーが復調、映画から始まる「反転攻勢」

日本でもディズニープラスの会員増に向けて手を打つ。日本での会員数は非公開だが、調査会社GEM Partnersによると定額制動画配信のディズニープラスの国内シェアは、2023年で8.9%にとどまる(1位はネットフリックスの21.7%)。

ウォルト・ディズニー・ジャパンのキャロル・チョイ社長は、「会員の動向からつねに学んでおり、性別や年齢層だけでなく、会員の嗜好ごとに細かく分析している」と話す。

実際、これまでも会員体験の充実を図ってきた。人気歌手、テイラー・スウィフトのコンサートフィルムを配信する際にアルバムを購入できるようにしたり、開業前の東京ディズニーシーの新エリア「ファンタジースプリングス」のプレビューに抽選で招待したりするといった取り組みだ。

今後は日本でもアメリカと歩を合わせ、ほかのメディアとの連携を強化する。すでにフールーとはバンドルを実施しているが、今後は日本の他メディアともバンドルを検討する。

作品の制作や供給の面でも連携を広げる考えだ。すでに講談社とは同社の漫画を原作とするアニメ作品の配信で提携関係にあるが、他社とも連携を広げる。「よりオープンな姿勢で連携を進めていく」(チョイ社長)。

現実路線の戦略へシフト?

これまで独自のコンテンツ力で会員を増やしてきたディズニーだが、その戦略には明らかに変化がみられる。独自作品を核にしながらも、他メディアとの提携・連携など、いわば現実路線で会員の上乗せを狙う戦略を進めるようだ。

かつて創業者のウォルト・ディズニーは、映画作品を中心に置き、その世界観をディズニーランド、商品、出版、音楽、そしてテレビへと広げる絵を描いた。その戦略は、現在も大きな違いはない(違いは、テレビに代わって動画配信の重要性が増したことぐらいだ)。

今回、映画の大型タイトルを相次いで発表したことは、ディズニー復活の大きな契機となる。一方で、発表されたタイトルには続編やアニメーションの実写化が多いのも事実。中核となりうる新たな作品が登場して初めて、ディズニーの真の復活と言えるのだろう。