"タイパ時代"上司と部下が考える「ムダ」の違い

リアルで会えなければせめてオンライン会議で。それも難しければ、最低でも電話を使う。メールやチャットを使うのは「ムダ」だ。表情も声色も相手には伝わらないからだ。

反対に、機能的な側面が強い目的(情報伝達や質問、アイデアの確認等)に対しては、テキストコミュニケーションを心がけたほうがいい。メールやSlack、Chatworkなどのビジネスチャットをメインにコミュニケーションをとる。

代表的なケースを次に列挙しよう。

・部長会議で決まったことを部下に伝えるとき
・受講した研修の感想を報告するとき
・メンバーに新しい企画のアイデアを出してほしいとき
・作成した資料のフィードバックを伝える(求める)とき
・お客様に商品の差別化ポイントを案内するとき
・上司に商談の進捗状況を報告するとき
 

こういうときにリアルで会って話すのは「ムダ」以外の何物でもない。特にタイパを気にする若者は、相当に嫌がるだろう。たとえ電話であっても、相手の声色や本題以外の話に引っ張られる可能性がある。効率だけではなく「効果」も落ちるので、まったくお勧めできない。

「会議はF1レースのピットイン」

私が考える、最もムダなコミュニケーションは「報告会議」である。

労働環境の質的向上と、生産性アップを目指して、2019年4月1日から「働き方改革関連法」が順次、施行され、時間外労働の上限規制などが盛り込まれている。

にもかかわらず、いまだに多くの会社が「報告会議」を繰り返している。しかもリアルの会議室に集まって、である。

会議にかかるコストは、単に時間だけではない。その会議に参加するために前後のスケジュールを調整するコストが発生する。お客様との打ち合わせや、商品企画のアイデア発散など、連続性を求められる仕事を中断するのは大きな損失(コスト)だということを忘れてはいけない。

20年前から私は「会議はF1レースのピットインだ」と表現している。ピットインの時間はわずかでも、その前後に大きなコストを支払っている。ピットに寄るために減速しなければならないし、レースに対する集中力もいったん落とさなければならない。

会議を招集する側は意識しないだろうが、たった30分、1時間でも、リアルで招集することは、それ自体が大きなコストなのだ。

報告会議の効果は「1人あたりの報告内容伝達率」で推し量れる。会議の中で報告される事柄が、参加者全員にどこまで伝わっているか。会議後にテストしてみれば判明するはずだ。

私は実際に、複数の会社で出口調査をしたことがある。ほぼすべての参加者が、会議で報告されたことを50%以上覚えていなかった。

「覚えていないが、配られた会議資料を見れば思い出せる」、こう言われることもあった。それなら会議に参加せず資料だけもらえばいいではないか。

しかも報告会議に参加したら、「別の会議で言われた内容とほぼ同じだった」ということもある。重複する内容ならムダでしかない。

このような報告会議に参加しても、なんとも思わない人はマジメにレースを走っていないドライバーと同じだ。限られた時間しかないのに、イチイチ寄り道を強要されたら苛立つのが普通の感覚であるのに。

意識の高い若者が、このような「ムダ」な会議に参加させられたあげく、定時になったら「早く帰れよ」「残業されると、上司の私が叱られる」と言われ続けたらどうか?

やる気がなくなるか、組織に迎合して無気力になっていくかのどちらかだ。

意味があるのに「ムダ」と勘違い

反対に、意味があるのに「ムダ」と勘違いされているコミュニケーションも存在する。

私が考える最たる例はセレモニー目的のコミュニケーションだ。

わかりやすい例が「入社式」「決起集会」「方針発表会」「歓送迎会」「新しい部長からの挨拶」などだ。感染症の心配がないのなら、関係者全員がリアルで集まったほうがいい。