モンスト「インド進出」に懸けるMIXIの腹づもり

ならばモンスト自体のポジションをもっと強くしていくべきではないかと考えた。イベントやアニメ、マーチャンダイジングなどで話題を作り、みんなでモンストをやろうという空気感を醸成することで、自分たちの場所を守りにいくのが一番いいのではないかと。

それなりに痛い勉強代だったが、業界全体が過渡期にある中では早めに切り替えられたという感覚はある。

日本のIPを紹介する“見本市”にしたい

――日本ではガチャによる課金が収益柱ですが、インド版はどのようなビジネスモデルになるのでしょうか。

マネタイズの手段が日本とまったく同じということはない。ゲームに課金をしてくれそうなのはミドル層と呼ばれる人たちで、多くは課金というものになじんでいない。今はいろいろなインターネットサービスがインドで成長しているが、アクティブユーザーが億単位の事業でもマネタイズには苦労していて、現状は広告モデルがインドにおける主流となっている。

インド版モンストに数億人のお客さんがついてくれたら、広告モデルは強化しないといけない。実は国内でも広告モデルは一部あるが、それをもう少し厚めにやっていく。

コレクションモデルもポイントだ。モンストは「鬼滅の刃」「ワンピース」などいろいろなIPと月1回くらいのペースでコラボしており、世界でもまれにみるIP集合体だ。インドでは日本のIPの人気が非常に高まっている。日本のIPをインドに紹介するための見本市のような存在になれたらいい。

イベントやアニメ、YouTubeなどの動画を含めて、日本のIPをコレクションする文化をどう醸成させられるかが1つのポイントになる。そのような文化を築いていくことができれば、私たちにもうまみがあるし、(日本版でコラボしてきた)ほかのIPホルダーの方々にも恩返しになる。

――2015~2020年にかけては、中国や北米などからの撤退も経験しました。当時の反省を生かせますか。

北米は、北米のオリジナル版を出そうとしていたことと、PCゲームで遊ぶ文化が出来上がっている中で、モバイルでのマルチプレイゲームは浸透しづらかったことが原因だ。また、ガチャ(ルートボックス)に対してのアレルギーも強かった。

中国はモバイル優位だが、テンセントと組み、大きなユーザー組織を持っているテンセントのプラットフォームから、一気にドーンとユーザーにインストールさせた。しかしわれわれの戦略は、友達が友達を誘って、つねに身近な友達と一緒に遊べる環境を作り、やめづらい状況にすることだ。中国ではそれをやりきれなかった。

インドでは、友達が友達を誘っていくような構造を徹底して作っていくつもりだ。

MIXIの木村弘毅社長
モンストの”生みの親”でもある木村社長。「きちんと外貨で稼げる企業」への転換を目指す(撮影:今井康一)

――現地に入り込んで展開するのが重要になりそうですね。

単独資本で進出するつもりだが、インドの現地資本が入っているところと組まないと政治的リスクの観点で難しい局面もあるかもしれない。そこは臨機応変にやりたい。

きちんと資本関係、契約関係を結ぶことは重要になる。そのあたりの難しさがあり、日本企業がインドに進出できない話はよく聞く。

インド領域の責任者はインドに住んでいた経験がある。中国版を手がけた経験もあり、そのときの反省は生かしてくれるはずだ。

一本足からの脱却に想定より遅れ

――SNS「mixi」の運営を開始して約10年でモンストをリリース。それからさらに約10年が経ちました。会社全体の現在地をどう評価していますか。

理想は利益規模が同じくらいの事業が3つくらい立ち上がっている状態だ。3つあればふらつかない。『モンスト』一本足からの脱却ということは、われわれも宣言しているが、想定より時間がかかっており、本当に申し訳ない。