また、選手たちの出場機会を確保する仕組みもある。1チームの登録人数に上限があり、それ以上の人数が集まるクラブは1学年で2チーム、3チームを作り、リーグ戦に登録することになっている。
このような生活を6歳から毎年戦っていくため、ヤマルの年齢と同じ16歳になれば200試合以上の公式戦経験を持つことになる。日本のサッカー少年少女は試合数だけで見ればスペインの2倍、3倍になるかもしれないが、大半が勝ち負けもスコアも覚えていない練習試合なのだ。
日本とスペインの違いは、休み方にもある。
日本では毎日「サッカー漬け」の生活を送っている熱心なサッカー少年少女もけっこうな割合でいる。何を隠そう日本ではわが家の息子たちも土日は特にサッカー漬けだった。
一方、スペインでは暑い8月に子どもたちはまったくサッカーをしない。プロの欧州リーグは今やスペインでも過密日程のカレンダーから8月中旬開幕となっているが、子どもたちは9月始動だ。
小学生は平日に2~3回の練習、土日のどちらかにリーグ戦の試合がある。つまり、週に3日以上サッカーをやらない日が必ずある。
わが家もスペインに来てから先週末は家族で海に行ったり、バスケットの試合観戦をしに行ったりしてサッカー以外の楽しみに触れた。とても豊かな時間、週末だった。
こうした“サッカーライフバランス”のとれた生活がサッカー大国、育成大国のスペインであっても当たり前であることは早く広く日本の皆さん、特にサッカー関係者に知ってもらいたい。
そして、レベルが拮抗したリーグ戦を年間を通して小学1年生から戦っていけば、週300分程度、年間9カ月の活動でもうまい選手、極稀にヤマルのような凄い選手が育ってくるというのはすでにスペインで実証されているのだ。