日テレ、広告の「新型取引」でCMはどう変わるのか

AdRMでは、これまでの視聴率=%をインプレッションに換算して取引する。どうすればいいかは、単純な話だ。インプレッションは何回表示されたか。視聴率はその瞬間に何%の人が見たかだから、人口をかければ表示数に換算できる。「視聴率×人口=インプレッション数」の公式で算出できる。

例えば最近は個人視聴率が5%などという番組はざらにある。以前よりずっと低いわけだが、大雑把な計算をすると1億2000万人×5%=600万インプレッション、ということになる。

一度に600万もインプレッションが獲得できるネット広告はそうそうないと思う。インプレッション取引では、テレビCMのリーチ力が莫大であることが明らかになり、その広告効果が見直される可能性があると私は見ている。

例えば人気YouTuberの動画が100万回再生されるとすごいと思うだろう。だが、テレビ番組の視聴率が下がって5%しかとれない、と言われるが600万インプレッションなら、100万回のYouTube動画より多いことになる。しかも動画は数日かけて100万回になるものだが、テレビCMは一瞬で600万だ。テレビはオワコンと言われるが、なんとまだまだいけるではないか、とならないだろうか?

だがこれだけではテレビCMの復権は果たせないだろう。以上のようなことは、広告主だってわかっている。ただテレビは、その莫大なリーチの中身に問題があった。

テレビCM取引で、広告主側が持っていた不満がこの「中身」にある。例えば視聴率が高く10%あるとしても、その大半は50歳以上の女性「F3」で占められることが多い。20~34歳の「F1」にCMを見せたい広告主からすると、不満に思うだろう。しかも枠の値付けは視聴率が基準なので高い。値段が高いのに欲しいF1が少ないようでは割高に感じてしまう。

一方、視聴率が3%しかないのにF1がたくさん見ている番組があるなら、値段は安いのでお買い得枠になる。

これまでのスポット取引では、割高枠も割安枠も交ぜて一緒くたに売られていた。出稿量が多い「お得意さん」の広告主は「F1含有率を少しでも高くしてくれ」と要望することもあるそうだ。それができたとしても、なんとも不合理な取引をしていた。広告主からすると、F1だけ買えればいいのに余計な部分にまでお金を払っている気持ちになる。一方、テレビ局としては本来は価値がある枠も、ほかと一緒に売ることになっていた。バルク売りと同じで、私が思うに結果的には安売りになっていた可能性がある。

視聴率が低くてもF1(20~34歳の女性)の割合が多い番組は割安に(左側)、視聴率が高くてもF1の割合が少ない番組(右側)は割高になる(筆者作成)

これまでの15才から「10才刻み」に

AdRMのインプレッション取引では、広告主が望めば「F1だけ」を取引することもできる。ただ、AdRMではターゲット設定をこれまでの15才刻みではなく、10才刻みにする。18-24才、25-34才、35-44才のようにこれまでより細かく刻む。これはまた、ネット広告のターゲット分類に合わせているのだ。

だから「1月1カ月で、F18-24を5000万imp買いたい」のようなオーダーができる。これまでは「200GRP買いたい」としか注文できなかったのが、ターゲットを指定して発注ができるようになる。これはテレビCM取引として画期的な変化だ。

ネット広告では、1カ月で18~24才の女性に5000万impの広告出稿をしてくれと言われたら、慌てふためくだろう。LINEとInstagramと、あそことあそこに広告出稿してそれでも足りない!となるのではないか。