筆者がかつて読んだ日本の学習漫画は、「勉強をわかりやすく解説してくれる、ちょっとお堅い漫画」のイメージだった。それに比べて、『理科ダマン』はギャグ要素が強い。韓国の学習漫画は、昔から面白いのだろうか。
原作者のシン氏に聞くと、「『理科ダマン』の制作にあたり、韓国と日本の学習漫画を読み込んだところ、あることに気付いた」という。
「ほとんどの学習漫画が『学習』だけに重点を置いていて、漫画本来の面白さが描けていなかったんです。
小学生向けの学習漫画とうたっておきながら、中身は大人の私も驚いてしまうくらい難しいものもありました」(シン氏)
学習漫画の役割は、学ぶことに興味を持たせ、次のステップへの道しるべになること。そのためには「楽しい学び」が重要だと考えたシン氏は、子どもも大人も楽しめる学習漫画を制作しようと決めた。
実際に『理科ダマン』を読んだ子どもたちに話を聞くと、「ギャグが面白い」という感想が圧倒的に多かったが、なかには「家でできる実験が紹介されていて、うれしかった」(小1男子)という声も聞かれた。
この家庭では実際に、『理科ダマン』で紹介されている「紙コップでお湯が沸かせるのか」という実験をしたそうだ。
保護者からは、「知識が増えて『俺、ちょっとすごいこと知ってるんだ!』と、うれしそうだ」、「小学生が好きなワードが取り入れられているので、自ら進んで読んでいる」などの声が聞かれた。
『理科ダマン』では、専門的な科学知識は章末のコラムで解説されている。ストーリー内では、概念を簡潔に解説する程度だ。
そのため「コラムまで読まないと、知識が身に付かないのでは」と懸念する保護者もいるかもしれない。
しかし、ギャグ要素を前面に出した構成だからこそ、学習漫画にとって最初の壁となる「子どもたちの心をつかむこと」を難なくクリアできている。
『理科ダマン』を愛読している小学生の母親は、「私も知らないトリビアを話していたので、どこで習ったのか尋ねると、『理科ダマンに載っていた』と言われて驚いた」と話していた。
『理科ダマン』の「面白さ」に魅了された子どもたちは、楽しんで繰り返し読むうちに、大人顔負けの知識を身に付けているようだ。
ナ氏は、「私たち大人だって、難しい説明を読むのは大変ですよね。だから、なるべく絵とストーリーだけで科学の概念を理解できるよう工夫しています。
科学の面白さを知り、興味を持ってもらうことが目的なので、何よりも面白く描こうと努力しています」と話した。
ナ氏は、韓国のギャグが日本の子どもたちにもウケたことについて、「予想外だった」と話す。
「人が笑うポイントって、その国の文化と関わりが深い。だから、日本の子どもたちに面白さが伝わりにくいかもしれないと思っていたんです。
でも、予想に反して『面白かった』という反応が多くて驚きました。みなさんに楽しく読んでいただけて、本当にうれしいです」
中学受験が過熱している日本でも、「学ぶことに興味を持ってほしい」と子どもに願う保護者は多い。
塾に通ったり、参考書を買い与えるのも一つの方法だが、子どもたちが科学や勉強に興味を持つにあたって、まずは『理科ダマン』の「面白さ」や「楽しさ」が取っ掛かりになってもいいのではないだろうか。