「何のためにこんなことを?」 ――気持ちが乗らない、退屈な作業。
「どうせうまくいかない」「つまらない」 ――ネガティブな想念が邪魔をする。
「あれもしなくちゃ、これもしなくちゃ」 ――集中力を維持できない。
私たちが行動を先延ばしにする要因は、さまざまあります。しかし、多くの場合、誰かに邪魔されているわけではないはずです。
つまり、動けない原因は自分の心のなかにある。
「やる気がない」と自分の心を責めたくなるのは、そのせいでしょう。
でも、人間の脳の仕組みを知ると、「動けない」のは「やる気」の問題ではないことがわかります。
というのも、私たちは、「やる気があるから、行動する」だけではありません。
「行動するから、やる気が出る」のです。
楽しいから笑うのではなく、「笑っているうちに楽しくなる」。
走りたいから走るのではなく、「走っているうちに、もっと走りたくなる」。
これが人間の脳の仕組みです。
この仕組みのカギを握るのは、脳のなかで働いている「ドーパミン」というホルモンです。
ドーパミンは、脳内で生成される神経伝達物質の一種で、報酬や快楽、そしてやる気に関係する物質として広く知られています。
ここで注目するべきは、「ドーパミンは何らかの行動に伴い、分泌される」という事実です。
つまり、じっとしているうちはドーパミンが分泌されにくく、したがってやる気も生まれません。
やる気が出るのは、行動した後のこと。
私たちの頭のなかを変えようと思ったら、身体を動かすのが先決、ともいえます。
少しわかりにくい話かもしれません。
それに、「やる気がないから動けない」と困っている人が、「やる気を出すために行動しろ」と聞いたら「それができないから困っているんだ」と、反論したくもなると思います。
でも、安心してください。
行動といっても「ほんのちょっと」でかまいません。むしろ、「ほんのちょっと」だからこそ、いいのです。
身近なシーンを舞台に、わかりやすい例を挙げてみます。