まとめ 「よい人物像」のレッテルを人は維持したくなる。
■ゼイガルニク効果、カラーバス効果、カクテルパーティー効果、カリギュラ効果
人の認知は、ちょっとした刺激でさまざまなバイアスが生じます。
テレビドラマを夢中で鑑賞中、誰かに中断されると物語のその後が大いに気になります。ドラマの佳境で「次回に続く」となると、次回も見逃せなくなります。
問題を解いている最中に制限時間がくると、後あとまで、その問題が気になります。どうすれば正解にたどり着けるのか、あれこれ考えてしまうのです。
突然恋人から別れを告げられると、その恋人を忘れられずに、ストーカーになるケースもあります。交際の突然の中断でプライドを傷つけられたからです。
人は達成できた事柄よりも、達成できなかった事柄の記憶が執拗に残ります。途中で挫折したり、中断させられた場合も同じです。これが「ゼイガルニク効果」です。達成できなかった事柄への執着を招きます。意向が制限されて「心理的リアクタンス(抵抗・反発)」を起こしたのです。
この「ゼイガルニク効果」は人の気をそそるのに適しています。
マーケティングでは、電子書籍を途中まで試し読みさせて、続きは有料登録しないと読ませないようにしたり、短いテレビCMで面白い動画を見せておき「続きはWebで」などと、告知して終わるテクニックでも使われています。
デートの別れ際に「大事なことを伝えたいけど、それは今度会った時にね」などと告げられると、早く聞きたくて次回のデートが待ち遠しくなります。ちょっとした「中断の設定」で、相手の気を引く効果は強化されるのです。
また、自分に気にかかることがあると、関連する事柄がよく目に留まります。次に買いたいと思うクルマがあると、街中で、そのクルマばかりがやたらと目につきます。
あるいは、太ったことを気にする人は、「脂肪」「痩身」「糖類ゼロ」「〇△ダイエット」などの言葉が飛び込んできやすいでしょう。ゆえに、広告には商品名より、そんなキーワードばかりを使いがちなのです。
このように無意識に「選択的知覚」がはたらくケースを「カラーバス効果」と呼びます。「色を浴びる」という意味で、特定の色が目につく現象が由来なのです。
なお、「選択的知覚」のうちでは、喧噪のなかでも、自分の興味のある事柄や自分に関連する言葉が聞き取れてしまう「カクテルパーティー効果」という現象もよく知られます。「○○ さんはケチだよな」などと小声で陰口をたたいたつもりが、意外にも本人の耳に届いていたりするケースもあるので、気をつけないといけません。
何かを禁止する――というのも心理的リアクタンスが生じるため、認知にストレスがかかります。ゆえに禁止されたことをかえってやりたくなります。
「〇〇さんは遊び人だから、誘われてもデートしちゃ駄目よ」などと吹き込まれると、かえって興味津々になって、誘いに乗ってみたくなるでしょう。
このように、何かを禁止するのが「カリギュラ効果」です。
かつてローマの暴君を描いた映画「カリギュラ」が、その内容が残酷すぎるとしてアメリカボストン市などで上映禁止となり、多数の市民が、隣の市まで観に行ったことに由来する認知バイアスなのです。
まとめ 中断、禁止は興味をそそる。