■ラベリング効果、一貫性の原理
人は誰でも、自尊心を持っています。いつも否定的に扱われていると、「どうせバカだよ」「俺はできそこないさ」などと、ヤサぐれていきます。だんだんミスを気にしなくなり、愚かな行動を取っても平気になっていきます。
心理学ではこれを「ゴーレム効果」と呼んでいます。人を誹謗するのはよくないのです。モラハラは人の心にダメージを与えます。
では、いつもほめている、たたえている場合はどうでしょうか。
人はほめすぎると増長し、評価者を小バカにするようになることもあり、適度なレッテル貼りでほめていると、よい意味でこちらの期待に沿うようになります。
部下からの仕事が早く上がってきた時には、「仕事が速いね」とタイミングよくほめてあげます。すると、部下の仕事の効率がどんどん上がっていきます。
同僚にパソコン操作を教えてもらう際には、「パソコンの達人だものね」などとひと言添えておくと、パソコン操作で困った時、いつでも頼みやすくなっていきます。
新婚当初は、奥さんの手料理がイマイチかもしれませんが、何か一品でも「これはうまいね」などとほめ続けていると、奥さんの料理の腕が上がっていきます。
このように、同じレッテルを貼り続けてほめる「ラベリング効果」はよく知られていますが、なぜ、よい結果へとつながるのでしょうか。
自尊心がくすぐられて快感――ということもありますが、「よい人物像」のレッテルを貼られると、その人物像を継続して演じたいという「一貫性の原理」がはたらくからです。つまり、誰かによいイメージのレッテルを貼られると、つねにそういうよいイメージの人物像を演じて、レッテル通りに対応したくなるのが人間なのです。
「いつもご親切にありがとうございます」などと感謝を伝えていると、相手は自分に、つねに親切に対応してくれるようにもなるのです。
では、こうした人たちへ、こちらの要求水準をもう一段アップさせたい時には、どうすればよいのでしょうか。
相手のよいレッテルを明示してから、「だけど、〇〇の場合は、さすがのきみでも無理だよね?」などと、ほんの少し見くびるような質問を付け加えるのです。
こんな言い方をされると、ちょっぴり反発心が湧くでしょう。すると、「いやいや、そんなの大丈夫」とばかりに請け合ってくれるはずです。
「一貫性の原理」に背中を押されるからです。よいレッテルを貼られているので、OKしないと沽券に関わるわけです。
希望通りワンランクアップの要求が満たされたなら、大いに感激し、激賞してあげることを忘れないようにしましょう。