その後、Zさんはその担当者の元に何度か通い、どんな仕事をどんな順番でやっているのか教えてもらいながら信頼関係を築いたそうです。
そしてZさんがなぜ、その納期での報告が必要なのかについてもていねいに伝え続けたとのことでした。そして、優先順位の付け方について一緒に協議するプロセスを経て、とうとう仕事の優先順位を変えてもらうことに成功したのです。
このZさんの一連の流れは、「報・連・相」でいうと、「報告」をなかなかしてくれない相手に対して、「連絡」することを重ねて、「相談」に乗って、仕事のやり方を変えてもらった成功事例です。
このように、他部門の相手であっても「報・連・相」を駆使すれば、相手の仕事の内容がわかって、改善することも可能なのです。
私は同じような事例を、あるビジネス書でも読んだことがあります。
その本の著者は、独立する前に勤めていた会社で広報を担当していて、社内報を作っていました。現場の営業担当が、社内報用に頼んだ原稿をなかなか提出してくれないことが悩みでした。
打開するために営業担当の面々に「どうして締め切りまでに原稿をくれないのか?」とヒアリングしてみたのです。すると、ある社内的な手続きに時間を取られていて、「営業の外回りから帰っても社内で時間がない」ということがわかりました。
そこで、その手続きを行っている部門にかけあって、営業の負担を軽くする改善を進めました。その結果、営業担当の帰社後の業務負荷が軽減され、結果的に原稿の締め切りが守られるようになりました。
リーダーになれない人は、「提出物が遅い」という目の前の事実に感情を害してしまって、力任せに「早く提出してください! こっちの仕事が進まないんです!」とイライラを爆発させてしまいがちです。
しかし、リーダーになれる人は違います。
ここでグッとイライラをこらえて、相手の立場になるのです。「やってもらえないのには、相手なりの事情があるに違いない」と考えて、理由を聞いてみる。すると、それまで見えなかったものが見えてくることがあります。
そして、Zさんやビジネス書の著者のように、「相談に乗る」「相手の困りごとを理解し、対処する」ことに成功するのです。
こうした発想と行動が取れる人は、いざリーダーの立場になったときに、チームのメンバーに動いてもらえるでしょう。