「少しのストレッチ」のほうが、最初は不安でも達成できる可能性があるレベルとも言えます。こうした経験を日常的に繰り返すと、次のモチベーションにもつながります。そして自己肯定感が上がっていきます。
『はじめてのおつかい』というテレビ番組を観たことがある人も多いと思いますが、私のイメージはまさにあれです。
「はじめての」はアウェイという意味。子供たちにとって「おつかい」はパパやママと行っていることで、そこまで難しいことではありません。
でも実際にやってみたら「道がわからない」「何を買えばいいか分からない」「一緒に連れてきた妹(や弟)は歩けないと言い出す」など、不測の事態が起こります。でも、パパやママがいないから何とかするしかない。その状況をテレビカメラが追い、大人たちは「がんばって」と目をウルウルさせながら見入ってしまいます。
では「はじめてのおつかい」を経験した子供たちが得られたものはなんでしょうか? 道を覚えることでも、おつかいのスキルでもありません。「できたよ!」という経験です。そうした経験を重ねて、徐々に新しいことができるようになってきます。
ちなみに番組のサブタイトルに「小さな大冒険」と付いていますが、これこそが「少しのストレッチ」につながります。
先日、子供の留学相談に来た49歳の女性にこの話をしたら、「娘の相談に来たはずが、自分は今そういうチャレンジをしているのかと恥ずかしくなりました。子供にさせる前に、私がチャレンジし続けなくては」と語っていました。
そこからお母さんの相談に移りましたが、最後は「会社で役職者として多忙でも、1週間の留学ならできそうだからチャレンジしてみようかしら」と帰っていったのが印象的でした。
大人こそ日常生活の中に「少しのストレッチ」を入れたいものです。 自分にとっての「はじめてのおつかい」を考えてみてはどうでしょうか。留学である必要はありません。前々からやってみたかった新しい習い事など「今さら」と諦めていないでしょうか?
ちなみに私が合気道の稽古を始めたのは49歳。そして抜刀術と茶道の稽古を始めたのは52歳です。最初はなかなか型が覚えられず「稽古に行くの嫌だな」と思いましたが、その時期を乗り越えて、今ではもっと他の稽古(=チャレンジ)をやってみようかなと考えています。会社や地域のコミュニティで、何かのリーダーに立候補してみるのもいいかもしれません。
「少しのストレッチ」というチャレンジを繰り返していくと、徐々に「何とかするしかない状況で、何とかする力」を身に付けることができます。そうやって大人がチャレンジをしている姿は、間違いなく部下や子供に良い影響を与えるでしょう。