「客単価4356円」女店主が営むラーメン店の秘訣

「製麺も1人でやっているのですが、100玉分の製麺をするのは女性の私にはそもそも体力的に無理だったんです。今やっている30玉ぐらいが限界かなと感じています。量が作れない以上、ラーメン一本でやることは難しく、結果このスタイルになるべくしてなったのかなと思います」(矢嶋さん)

お客さんがしっかり集まって、スタッフもいて、行列が作れる場所であれば、ラーメン一本に絞って席を回転させていくほうが儲かるかもしれないが、現実的にできることを考えるとこのスタイルがベストという決断になった。

また、「中華蕎麦 とみ田」や「らぁ麺 飯田商店」など、予約制のお店もだんだんと出てきているし、完全予約制でコースで食べてもらうラーメン店があってもいいのでは……という仮説もあった。

営業スタイルも、結果的に独自色を貫いている。だいたい営業日は週3日、1日3回転で15人が来店する。アルバイトがいる日は席数を増やして、1日24人程度の予約を受けている。

ほとんどのお客が来店時に次の予約を入れていくので、ネットでの予約可能の数が少なく、すでに予約困難店となっている。ほとんどがリピーターだという。

1時間ゆったりと、食事と会話を楽しむラーメン屋さん

「1日の客数とメニューが決まっているので、仕込みに無駄がなくロスもまったく出ないというメリットがあります。

もともとラーメン屋さんがやりたくて始めましたが、価格4356円と高いのでラーメン屋の客層とはまったく違います。美食家の方や料理の食べ歩きを趣味にされている方が多いですね」(矢嶋さん)

一時期ラーメンのみの営業やったこともあったが、通常に比べて満足感を与えられていないのではないかという不安に駆られたという。1時間ゆったりと食事と会話を楽しみ、満足して帰られるお客さんの顔を見ると、このスタイルでよかったと感じるそうだ。

「既存のラーメン屋さんが原材料高騰などで経営圧迫されているなら、このスタイルを考えてみてもいいかなと思います。それから女性店主が1人でできるお店の形でもあるので、新たなラーメン店のあり方として見せていければいいかなと思います。

住所非公開ということもあり、グルメサイトやGoogleの口コミを見て一喜一憂することもないので、メンタル的にもよかったかなと思っています」(矢嶋さん)

「純麦」は価格問題に苦しむラーメン業界に1つのヒントを示してくれている。

(筆者撮影)