各国のチャートを並べると、トレンドも見えてくる。台湾や韓国は比較的日本に近い。一方、タイやシンガポールは、XGがランクインするようにダンスミュージック系が人気。また、King Gnuのようにアジアで上位ではないが、欧州に強く英国でトップを獲得するアーティストもいる。
映画で使用されたインストの楽曲が局地的にヒットした例、ネットでバズった楽曲など、ヒットの経路は多種多様だ。
ビルボード事業本部上席部長の礒?誠二氏は「グローバルの目線で、わかりやすく伝えるための何かがないか、2010年代の半ばから考えてきた。さまざまなヒットの勝ち筋があることを示したかった」とチャート公表の意義を語る。
各国でのチャートは韓国、シンガポール、インド、フランス、イギリスのチャートを皮切りに、10月下旬にアメリカ、ブラジル、台湾、ドイツ、南アフリカと順次広げていく予定だ。
これまで見てきたように、日本のさまざまな楽曲が世界中で聴かれているのは確かだが、浸透度合いはまだ微々たるものだ。
礒?氏によると、各国のランキングから日本の楽曲を抽出すると「台湾やシンガポール、韓国では200位以内で見つかるが、インドは700位、フランスは2000位、ドイツやアメリカは2900位、英国は3300位までいかなければ出てこない」という。やはり海外ヒットの難易度は高い。
しかし、これは海外市場を攻めるポテンシャルでもある。新たなチャートが示したように、アニメのタイアップだけでなく、ボカロPやTikTokでの人気、シティポップへの注目から日本の楽曲が聴かれるケースがある。海外に向けたアピールの武器は、以前より格段に増えているわけだ。
YouTubeやサブスクサービスの普及、各種SNSの人気もあり、世界中に日本の音楽が届く下地は整っている。これまでも、数々の有名アーティストが挑戦してきた「世界的なヒット」を狙うためには、各国のトレンドを踏まえた、柔軟なアプローチが求められそうだ。