このように、天才が絶対にやらないようなことを地道にやるしかありませんでした。
「③声かけ」について補足すると、チラシを配る場所と相手を選ぶことで、結果が変わることに気づいたんです。
当時の僕らは、毎月1万枚のチラシを刷っていました。
ちゃんとした町の印刷屋さんに依頼していたので、毎月数万円の費用がかかります。貧乏学生だった僕らにとっては死活問題でした。
チラシを配るなら、大阪なら梅田や難波、天王寺といった、人が多く、ターゲット層である女子中高生たちがうじゃうじゃいる繁華街が王道でしょう。ただやってみると、チラシを受け取ってもらえても、ライブの動員にまったくつながらなかったんです。
感覚的に、1000枚配っても次のライブ動員につながるのは0.1%程度。いや、ひとりでも来てくれたら御の字でした。
音楽に興味がない人にいくらチラシを配っても、効果はゼロに等しいということを知ったのです。
効果があったのは、ライブ会場や楽屋の入り口付近に集まる、ほかのバンド目当てのファンたちへの「声かけ」です。
つまり、どうせ声をかけるなら「音楽、とくにバンドのライブに興味がある人」にしようと的を絞ったのです。
無差別に1万人にチラシを撒くよりも、音楽に興味のある人が集まるライブハウスの前で100人にチラシを配ったほうが、リターンが多くあることに気づいたわけです。
100枚配って1~3人くらいですが、はっきりとした「手応え」を感じました。
そして、ライブ会場まわりの「声かけ」を含めたチラシ配りにシフトチェンジしたところ、だんだんライブの動員数も増えていきました。
このように、「凡バンドマン」なりに「何をすればいいのか」を必死で考え、試行錯誤した結果、効率よく結果につながる方法にたどり着いたのです。
「天才」や「テクニックのあるバンドマンたち」には到底敵わなかった僕らが重要視したのは、「いつかこの才能を見出してもらえるだろう」と受け身の夢をもつよりも、「目の前の課題」(このときでいえば、動員力をつけること)に真っ直ぐ取り組むことだったのです。
でも、自信がなければ、チラシを配りつづけたり、いきなり声をかけたりすることなんてできませんよね。僕らも「俺たち、ほんまはすごいんやで!」という自信があったからできたんです。
以前の記事「『凡人』が思いがちな勘違い『天才』との決定的な差」では、「自分は天才でも何でもなく、凡人だということを認める」ことから始めましょう、とお話ししました。
だからといって、「自分は凡人だから何もできない」と考えてはいけません。時には凡人なりの「思い込み」が必要なのです。
凡人が「その他大勢の凡人軍団」をごぼう抜きするために、僕が大事だと思うのは「根拠なき自信」です。実績(動員数など)を積み上げていくことが「本当の自信」となっていくことを知りました。
こうして動員力をつけた僕らは、大阪のアマチュア界において、知名度も上がり、ライブハウスからも一目置かれる存在になりました。
きっと、演奏の実力でいえば僕らと同じくらい、いや、それ以上のバンドはいくらでもいたでしょう。
行動すれば、チャンスは誰にでもあるのです。
「一発逆転」を夢見るのをやめ、でも「根拠なき自信」を捨てず、地道な行動を積み重ねていけば、みなさんにも、きっと道がひらけると思います。