悩み事でクヨクヨしない人が読書を欠かさない訳

何度か電気ショックを与えると、Aのケージのマウスは、電気ショックを止める方法を学習します。レバーを踏んで自分で電気ショックを制御できるマウス(A)と、何もできなくて、ただ電気ショックにおびえるマウス(B)では、どちらがよりストレスの影響を受けるでしょうか? 

結果は、電気ショックを受ける回数や時間は全く同じであったにもかかわらず、何もできないBのマウスのほうは、ストレスによって猛烈な早さで衰弱し、よりストレスの影響を受けたのです。

ストレス(電気ショック)を受けた時間、回数は全く同じです。しかし、苦痛を制御する方法を知っただけで、不安とストレスが大きく軽減したのです。

つまり、「どうしていいかわからない」状態において、最もストレスが強くなる。

対処法、解決法を調べて「何とかなる」(コントロール可能)とわかっただけで、状況は全く改善していなくても、ストレスの大部分はなくなるということです。

言語情報が不安を消し去ってくれる

解決法を知るだけでストレスや不安が軽減される。もう1つ、科学的根拠を示しておきましょう。

不安というのは、脳の「扁桃体」という部分と関連しているということが脳科学の研究でわかっています。「扁桃体の興奮」=「不安」という図式です。

うつ病とは、ストレスに長期にわたってさらされたために、「扁桃体の興奮」のスイッチが持続的にオンになって戻らなくなってしまった状態だと考えられています。ですから、うつ病の患者さんは、常に不安で、何でも悪いほうに考えてしまいがちです。

逆にいうと、「扁桃体の興奮」を鎮めれば、不安を減らせるということです。脳機能イメージングを使った研究によると、「言語情報」が脳内に入ってくると、扁桃体の興奮が抑制され、それにともないネガティブな感情は静まり、気分も改善され、決断能力が高まることが観察されました。

子供がケガをしたときに「痛いの痛いの飛んでいけー」とおまじないをかけると実際に痛みが軽減するのは、暗示効果もあるでしょうが、「言語情報の流入による不安の除去」の結果でもあるのです。

医者からただ「この薬を飲んでください」と言われても不安なままですが、きちんと薬の説明をされるとそうした不安は軽減します。

「情報」は、人間の不安を和らげてくれるのです。

「脳への言語情報の流入」というのは、「話す」「聞く」「読む」などさまざまなパターンがあります。その中でも人に相談する、人から情報を得るのが最も効果的なのですが、「話す」「聞く」には相手が必要です。

しかし、「読む」のに相手は必要ありません。本1冊分のお金があれば、誰にでも、自分1人で、すぐに実行可能です。

6分間の読書でストレスが3分の2以上軽減

心配事があれば、その対処法について書かれた本を1冊買ってきて読めばいい。「言語情報」によって不安は軽減し、「解決法を知る」ことでストレスも軽減するのです。

本を上手に利用すれば、不安やストレスのかなりの部分を減らし、そしてコントロールできるようになります。

『読書脳』(サンマーク出版)。書影をクリックするとAmazonのサイトにジャンプします

読書には、ストレスや不安を解消する効果がある。では、実際に読書をした人を対象にした研究ではどういう結果が出ているのでしょう。

イギリスのサセックス大学でのストレス解消についての研究では、読書、音楽視聴、1杯のコーヒー、テレビゲーム、散歩、それぞれのストレス解消効果を、心拍数などをもとに検証しました。その結果、読書は68%、音楽視聴は61%、コーヒーは54%、散歩は42%、テレビゲームは21%のストレス軽減効果が見られ、読書が最も高いストレス解消効果が得られるということがわかりました。

また、静かなところで読書を行えば、わずか6分間でストレス解消効果が得られ、即効性があることもわかったのです。つまり、静かな場所で 6分間読書をすれば、ストレスを3分の2以上軽減できるということになります。