スタンフォード大学のキャロル・S・ドゥエック教授が2006年に出版した『Mindset:The New Psychology of Success』で紹介された“グロースマインドセット"という考え方が、再び脚光を浴びています。
マイクロソフトのサティア・ナデラCEOがマイクロソフトのカルチャー改革の際に、この「グロースマインドセット」という考え方を繰り返し提唱し、見事にクラウド時代へ対応、ビジネスの成功を収めたことも大きいと思います。
マインドセットとは、“人間が持つ固有の考え方”を指しますが、同書の中で、マインドセットには、グロースマインドセット(成長思考)とフィックストマインドセット(硬直思考)があると紹介されています。
グロースマインドセットは、努力次第で自分の能力を成長させることができるという考え方、フィックストマインドセットは、生まれつき能力は決まっているので変わらないという考え方です。
マイクロソフトではこのグロースマインドセットに基づいて、know it all(すべてを知っている)という硬直的な考え方から、learn it all(すべてを学ぶ)へと意識改革が行われたそうです。
すべてを知っているという思考であれば、当然失敗をしてはいけないという呪縛に囚われ、挑戦を避けるようになってしまいます。ところが、自分たちは知らないのだから失敗しながら学んでいこう、というふうに姿勢が変われば、挑戦をしていけるようになるのです。
とくにリスキリングを進めていくうえで、このグロースマインドセットの考え方が大切なのは、企業が未踏の新規事業に挑戦するために欠かせないスキルを従業員が身につけていくことが必要になるからです。
このグロースマインドセットの考え方を活かして、リスキリングを成功に導く大前提となる「7つのリスキリング・マインドセット」をご紹介します。
① 「まずやってみる」を心がけよう
とにかくこの初動「まずやってみる」が何より大切です。
日本のビジネスにおいては、慎重で失敗しないことを良しとし、様子をうかがってから動く、といった姿勢が多く見受けられます。しかし、それよりもその行動が正解なのかどうかとか、成功するか失敗するかなどと考える前にまずやってみる、試してみる、その結果自分に湧き上がってくる気持ちを正直に受け止めるといった習慣が大切です。
過去事例や他社事例を調べて、知っているつもり、わかったふりの状態で物事を判断するのと、実際にやってみて感じ取った気持ちを優先するのでは、理解度や納得度が異なります。
② コンフォートゾーンから飛び出す
解雇に対する過度の恐怖心などから、やみくもにはやりのことを学ぶのは問題がありますが、個人が健全な危機感を持ちながらリスキリングに取り組むことは良いことだと考えています。