波瑠は『お嫁くん』も『向井君』も、どちらも仕事ができるしっかり者で、男性に媚びず、サバサバと接する役を演じている。夫の協力を得ながら実業家として活躍する『あさが来た』のヒロインを演じて以降、波瑠はもうずっと、男性に尽くすのではなくむしろ尽くされながら、かわいげを失わないという、ある種の理想像を演じ続けている。
奇しくも、『あさが来た』で波瑠演じるヒロインの娘役に大抜擢され、以降、重宝されている小芝風花は、4月期『波よ聞いてくれ』(テレビ朝日)、7月期『転職の魔王様』(関西テレビ)に連続出演。『波よ』では髪の色などを変えたりしながらも、ハツラツとして健気な女性像の期待に応え続けていることが興味深い。
山本耕史はキャリア的にはベテランだが、2022年、映画『シン・ウルトラマン』と大河ドラマ『鎌倉殿の13人』(NHK)でセカンドブレイクし、『Dr.チョコレート』、『大奥』(NHK)と引っ張りだこだ。
ファーストブレイク期(『ひとつ屋根の下』(フジテレビ系)など、1990年代トレンディドラマの時代)はピュアな青年のイメージだったが、セカンドブレイク期では、ちょっと胡散臭い人物というイメージの変化で、俳優としての可能性を大きく伸ばした感がある。
このように、同じ俳優たちが起用され続ける世界は、まるで椅子取りゲームのようだ。たったひとつだけ空きがあり、そこに座るためにがんばって、座ったら最後、もう絶対に椅子を譲り渡せない。そんな熾烈な芸能界。当人たちの意思か、マネージメントの意思かはわからない。いずれにしても、もっと広く椅子を空けることはできないのだろうか。
このような状況に、「芸術は爆発だ!」の名言で有名な岡本太郎の言葉を思い浮かべる。
「今日の芸術は、うまくあってはならない。きれいであってはならない。ここちよくあってはならない」
岡本と、彼の代表作「太陽の塔」をリスペクトした番組『TAROMAN』(NHK)では、この言葉をアレンジして主題歌『爆発だッ!タローマン』 を作り、さらに「好かれるヤツほどダメになる」「なれあいを断ち切れ!」と歌っている。テレビ局の皆さんはこれらの言葉をどう思うだろうか。いや、まあ、ドラマは芸術じゃないのだが。
くり返すが、俳優たちは皆、演技巧者で、期待されることを適切に提示することに力を発揮しているのであって、それは評価に値する。才能ある俳優を何度も起用するなら、逆にその分、攻めたドラマにチャレンジしてみてもいいのではないか。